2005年9月30日

2005年9月

北海道新聞 05/9/30
昨日と今日の試合 05/9/29
リーフス戦 05/9/28
ポディーンとプラント 05/9/27
どこまでやるんだ、シュートアウト 05/9/26
テッポとヴァネク 05/9/26
2日目も行ってきた。 05/9/25
26番 05/9/25
永久欠番の噂 05/9/24
オベチキン登場 05/9/22
ミカチュー…… 05/9/21
アトランタの暗雲? 05/9/20
オープン戦9/18 05/9/19
オープン戦9/17 05/9/18
ジェームズ・モリス 05/9/18
セイバーズのキャンプ 05/9/17
ポランスキーとイギリス文学 05/9/14
デレク・プラントとジェイ・マッキー 05/9/12
「マリア」ある歴史ロマンス 05/9/12
待つ女の物語 05/9/10
James Patrick引退 05/9/9
セイバーズとNHLの最新ニュース 05/9/8
海外TVドラマ・ベスト10 05/9/6
しょうもない話。 05/9/5
感動的な結末。 05/9/4
コンドルズのゴーリーその後 05/9/3


北海道新聞 05/9/30

 アジアリーグ、公式サイトや日本製紙クレインズのサイトには結果しか書いてないのですが、いわゆる記事や写真はないものかと北海道新聞にあたってみたら、さすがにありました。昨夜のデレク・プラントのゴール・シーンの写真がばっちり出ていた。記事は短かいけれど、これ以外、何もないわけだからねえ(たぶん)。毎回見に行っている人のブログとかないのだろうか。2ちゃんねるでも東京の開幕戦以外はほとんど書き込みなし。

追記
 ファンサイトを見つけた。掲示板に観戦記あり。プラントはもうデレクと呼ばれているのだね。


昨日と今日の試合 05/9/29

 現地時間9月28日、バッファローでの対オタワ戦。ビロンがダメなときのビロンで、2対5(1点はエンプティネット)で敗れた。これまではどこもセイバーズに対しては飛車角落ち、タンパに至っては飛車角金落ちという感じだったが、やっとフル・メンバーに近いチームとの対戦。オタワはハシェックが初めてシュートアウトまでフル出場する試合。ハシェックはこれまでは前半、2ピリ途中までしか出場していなかった。
 セイバーズは前日のリーフス戦で少し疲れていたようで、動きが鈍かったらしい。オタワは今日はヒートリーはおとなしかったようだ。ブリエアは2ピリにゴール、3ピリにアシスト。デュモンも1ゴール、1アシスト。ブリエアはシュートアウトでもゴール。シュートアウトはセイバーズが2対1で勝っている。ケガで欠場と思われたヴァネクは出場していて、シュートアウトでスラップショットを決めた。ハシェックは勝敗が決まったあとのシュートアウトはどうでもいいらしいが、前日のベルフォアはなんであんなにがんばっていたのだろう。

 昨夜と今夜、釧路ではクレインズとノルディック・バイキングスの試合が行なわれていた。昨夜は8対1でクレインズの勝ち。プラントは2アシスト。ノルディック・バイキングスは北欧の選手中心のチームで、アジアのホッケーの活性化のために参加したようだけど、いきなり8対1って、と思っていたら、今夜の試合は2対1でクレインズの勝ち。だいぶ落ち着いたようです。プラントは今夜は1ゴールで、これで4試合で2G3A。11月の関東の3試合のチケット、もう購入しました。クレインズの関東の試合はもうこれしかないのだった。


リーフス戦 05/9/28

 現地時間9月27日、トロントでのリーフス戦。セイバーズのゴーリーはノロネンかと思われたが、ミラーだった。ノロネンはバックアップでベンチ入り。ヴァネクが腰のケガで10日間は無理という話で、この日は欠場。
 で、試合はリーフスがペナ取られまくりで、それを次々とセイバーズがものにし、5対2でセイバーズが勝った。ミラーはかなりよかったらしい。リーフスは主力があまり出ていなかったが、ケガ持ちが多いし、ベルフォアは40歳だし、バックアップがろくなのがいない、ということで、かなり悲惨な状況だとか。それで、JFJことファーガソンGMが「ノロネンくれ!」と必死に頼み込んでいるらしいのだが、セイバーズとしてはもちろん、ディビジョン・ライバルにゴーリーを出すわけもなく……ノロネンがキプラソフだったらどうする?
 そんなこんななリーフス戦でしたが、最後のシュートアウト、リンディ・ラフHCは乱闘係やディフェンスを出して楽しんでいたようだ。そのせいか、なかなか決まらず、ドミがゴールしてやっと決まった(大笑い)。ミラーはドミの顔が怖くて目をつぶってしまったのだろう、と冗談を言われている。
 セイバーズは二軍に落としたはずの乱闘係を入れていたりして、すっかりリーフス戦モード。お約束の乱闘もあったようです。ディフェンシブな采配で知られ、それでノーラン時代のフォワード(例のプラントもそう)がだめになったとか、シャターンがうまくいかなくなったのもそのせいだとか言われていたラフHCは、この試合ではパワープレーでフォワードを5人出したので、ファンが驚いていた。


ポディーンとプラント 05/9/27

 以前、紹介したNHL公式サイトのプレーオフ・トップ10映像、セイバーズ対フライヤーズ90年代プレーオフにポディーン(フライヤーズ)とプラント(セイバーズ)が映っているのではないかと思い、アクセスしてみたらまだリンクが切れていなかった。確かに2人とも映ってます。この映像だとポディーン(25番)は特にでかくないし、プラント(26番)はちっこい。97年のプレーオフは2人とも、キャリアのピークだったようです。ということで、見たい人は次のリンクへ。

Sabres vs Flyers

 ついでに、97年プレーオフ1回戦でのプラントのみごとな同点ゴールとOT決勝点の映像のリンクも。

Offence 97

 Legends of HockeyというサイトのNHL選手名鑑のようなもので2人の経歴を調べてみたら、面白いことがわかった。ポディーンとプラントは実はミネソタ大学の先輩後輩で、1シーズン、チームメートだったのだ。つまり、プラントが日本に来たのはポディーンの紹介?
 キャリアを見比べてみると、この2人はまったく対照的というか、プラントは大学時代に賞を取ったりベストメンバーに選ばれたりと栄光の日々。早くからその才能を認められ、高校卒業直後にセイバーズからドラフト指名を受ける。大学を経てプロ入りし、すぐにNHLで活躍。56ポイントをあげている。96/97シーズンにはセイバーズのトップ・スコアラーに。とはいっても、ポイントは53で、当時のセイバーズのチーム事情が思いやられる(「セイバーズは金がないので、デレク・プラントよりいい選手が取れなかった」なんて書いてあるサイトがありました)。ちなみに、次のシーズンから6年間、シャターンがトップ・スコアラーになっている。
 しかし、小柄な体格のせいか長くは活躍できず、98/99シーズンにはだいぶ成績が落ちてしまった。そして、レギュラーシーズン終盤に優勝をねらうスターズがフォワードの補強のためにトレードで獲得。このとき、セイバーズは東カンファレンス第7シードで、誰もファイナルへ行くとは思わなかっただろうが、結果的に両チームはファイナルに進出、プラントはタナボタ・カップ獲得とあいなった。
 それに対し、ポディーンはオイラーズにドラフトされたものの、そこでは一軍に上がれず、マイナーでの下積みの末にUFAでフライヤーズへ。そこでペナルティ・キラーとして頭角をあらわした。97年にはフィリーでファイナル進出、その後、アバランチに移ってカップ獲得。優れた社会貢献をした選手に与えられるキング・クランシー・メモリアル・トロフィーを受賞している。
 こうして見ると、短い期間、パッと燃えた天才型のプラントと、がんばって長く活躍した努力型のポディーンという構図が見えてくるのだった。
 というわけで、参考にした2人のページへのリンク。

デレク・プラント
ショーン・ポディーン

 また、Hockeys Future掲示板のアジアリーグ・スレッド(ちゃんとあるのね)に、24日の試合を見た人の感想が書き込まれていた。ポディーンと彼が連れてきたクリス・パラダイス、そしてプラントについての感想も記されている。

Bucks' new imports Podein had occasional nice plays but on the whole was muted, and Paradise was kinda invisible. Cranes' Plante also had occasional flashes of good shots and playmaking. Once these guys get rolling in the season, maybe things'll get more exciting.

 以下は、プラントとセイバーズに関する笑うっきゃないネタ。

 実はセイバーズの掲示板でプラントが話題になったのを見たことがない。もう忘れられた選手なのだろうと思っていたら、SabresHistoryのサイトの各シーズンのロースター表を見て驚いた。プラントのところがすべて0になってるのだ! これって、陰湿ないやがらせじゃないか、とショックを受けたのだが(個別のプロフィールにはしっかりと数字が書かれている)、セイバーズのファンにとって、プラントは悪口を言うほどの選手ではないが、あまり思い出したくない選手なのだというのはわかるような気がする。
 何度も書いているように、プラントは99年3月にスターズにトレードされて、そこでタナボタ・カップ獲得となった。しかも、ファイナルには出場せず、なのに、バッファローで優勝してカップを持ち上げたわけだから、ファンの怒りもわかろうというもの。でも、別にカップ目当ての移籍ではなかっただろうから、疑惑のゴールはハルの責任でないのと同じくらい、これもプラントが悪いわけでもない。しかし、プラントは疑惑のゴールと一緒に記憶されてしまったわけだ。
 プラントのセイバーズ時代はマックラーGMとノーランHCの確執でチーム内がぐちゃぐちゃになっていた時期で、97年オフにマックラーとノーランがやめたあとも、この2派はハシェック派とバーナビー派に形を変えて残り続けた。一説によると、この2派はヨーロッパ選手派と北米選手派でもあったそうで、バーナビーはじめノーラン時代からの北米派はしだいにトレードで姿を消していく。
 プラントも北米派だと思うが、彼の場合、成績が落ちたためにアイスタイムを減らされ、それでトレードを求めた。セイバーズ側としては、プラントはもう役に立たなくなっていたので、ドラフトと交換でよかった。そして、そのドラフトでいい選手を選んだのだが、なんと、ダーシー・レギアGMのファックスが壊れて契約期限に間に合わなかったというのだ!
 以来、ダーシー・レギアのファックスというのは、セイバーズ・ファンの間では笑うっきゃないネタになっている。
 プラントにはセイバーズのジャージで会いに行ってはいけない(たぶん)。


どこまでやるんだ、シュートアウト 05/9/26

 9月25日、タンパでのセイバーズ対ライトニング戦。2対2のままシュートアウトに入ったが、なかなか決まらず、セイバーズで11番目に打ったヘヒトのゴールが決勝点となった。いつまでも決まらないので、このままだとバックアップのミラーが打つことになるんじゃないかと掲示板で言われてたくらい。でも、引き分けで終わるよりずっと楽しいと、ファンには好評のようだ(勝ったからね)。
 相変わらずセイバーズの相手チームは主力を出して来ないので、タンパ三羽烏もアンドレイチャクも登場せず。だからビロンは16本しかシュートを受けなかったらしい(そ、それで2点も取られたのか)。ヴァネクがまたゴールして、これで5ゴール目。
 いつも試合が終わった頃に実況掲示板を読むのだけど、この日はタンパのラジオがバッカニアーズの試合を中継していて、それが終わるまでライトニングの中継が始まらず、両チームのファンはイライラしていた模様。やっと終わってホッケーになったら、エスポジトがアナウンサーが実況してるのにしゃべりまくってて、迷惑だったそうです(飲んでいたらしい)。
 なんにしても、オープン戦のポイントはレギュラー・シーズンには持って行けないし、レギュラー・シーズンのポイントはプレーオフには持って行けない。それは二軍のアマークスがよく知っているはず。まあ、レギュラー・シーズンになっても、他チームがセイバーズには手抜きしてくれればいいんだけどね(でも、楽天のようにボーナス・ステージだと思われているのだが)。
 写真は左がゴールしたヴァネク、右はゴースタッド。


テッポとヴァネク 05/9/26

 テッポ・ヌミネンとトマス・ヴァネクのインタビューがネットに掲載されたので、日本語で紹介します。
 元記事 テッポ・ヌミネン トマス・ヴァネク
 インタビュアーがバカなことをきいていると、怒らないでください。


テッポ・ヌミネン インタビュー

ロビン・アダムズ「あなたの名前、テッポはフィンランド語で「勝利の」という意味だけど、セイバーズに来たのは幸運をもたらすため、ということだね?」
テッポ「本当? それは初耳だね。母に電話しなけりゃ。そう、ここに来たのは幸運をもたらすためだよ。セイバーズはいいチームになると思う。いいプレーをして、多くのチームを驚かすだろう」
アダムズ「では、チームUSAにとっての「ミラクル・オン・アイス」の話をしよう。USAはオリンピックの決勝戦でフィンランドと対戦した。あの試合を覚えている?」
テッポ「ああ、父がフィンランドのナショナル・チームのコーチをしていたんだ。だから、あのときのヘッドコーチは父だよ。思い返してみると、あのときはテレビの生中継がなかった。だから、ラジオを聞くしかなかったんだ。もちろん、フィンランドを応援したが、勝てなかった。でも、フィンランドが4位(2位の間違い?)になったのは、フィンランドでは大きな出来事だった」
アダムズ「16年間のNHLのキャリアで、東カンファレンスでプレーするのは初めてだね。西カンファレンスとどう違うと思う?」
テッポ「みんなが移動についての話をしていて、それでチームが一体になると言っている。だから、それが大きな違いになると思う」
アダムズ「最後の質問だけど、バッファローに来たので、四輪駆動車にお金をつぎ込んだとか」
テッポ「いや、ミニバンを探していたんだ……でも、ミニバンを四輪駆動にできるのかどうかわからない……1月に3人目の子供が生まれる予定なんだ。だから、家族全員が乗れるようにしたい」


トマス・ヴァネク インタビュー

デニス・ウィリアムズ「きみは新たなオーストリア人の有名人になりたいだろうけれど、一番有名なオーストリア人は誰か、よかったら教えてくれないか?」
ヴァネク「アーノルド・シュワルツェネッガーだよ」
ウィリアムズ「40ゴール以上すれば、市長に立候補して、アーノルドのように政治的野心を実現することができるよ」
ヴァネク「それはいいよ。スタンレー・カップの方が取りたい」
ウィリアムズ「何か国語も話せるそうだけど、いくつ?」
ヴァネク「3つだ……ドイツ語、チェコ語、そしてもちろん、英語」
ウィリアムズ「プロ契約を結んだとき、最初に買ったものは?」
ヴァネク「車さ。キャディラック・エスカレード」
ウィリアムズ「レッドブルはきみの国で生まれたのは知ってる?」
ヴァネク「ああ、そうだよ。パパがホッケーをしていたとき、主なスポンサーはレッドブルだった。できたばかりの頃だよ。グミ・ベアーズのような味だった。パパがいつも家にたくさん置いていたんだ。5、6歳のとき、それを飲んで、どなられた。今はそのわけがわかる」
ウィリアムズ「きみの国で撮影された映画で、一番有名なのは?」
ヴァネク「「サウンド・オブ・ミュージック」」
ウィリアムズ「見たことがある? 大ファンなのかな?」
ヴァネク「見たよ。別にどうってことないね」
(ヴァネクはチェコ系のオーストリア人で、父親はチェコとオーストリアでホッケー選手だった。また、「サウンド・オブ・ミュージック」はオーストリアを正しく描いていないと、主演のクリストファー・プラマー(カナダ人の俳優)が指摘している。また、レッドブルはタイ生まれのドリンクで、オーストリア資本の会社が販売しているとのこと。コーヒー一杯分のカフェインが含まれている。)


2日目も行ってきた。 05/9/25

 アジアリーグ2日目、第1試合はパスしてコクド対クレインズだけ見に行こうと西武新宿線に乗ったら、人身事故が起こって30分以上カンヅメになってしまった。もうあきらめようか、と思ったら動き出し、なんとか1ピリが始まってさほど時間がたっていないときに到着。立ち見の位置を決めたとたん、プラント、ゴールだぜぃ! でも、そのあと、立て続けに2回もペナ取られてました(この日は合計3回、箱入りした)。
 試合は1ピリにクレインズが2点、2ピリにコクドが2点入れて、OTまで行ったが引き分け。ハラハラドキドキの試合だった。終わったとき、氷の上に寝っ転がってしばらく起き上がらなかった選手がいたけど、疲れたんだろうね。昨日活躍した主力の選手が出ていなかったような気がしたけど……。終盤、プラントが味方のゴール前から一気に敵陣までパックを運んだけど、だめでした。
 今日は自由席なので、いろいろな位置で立ち見して楽しんだ。特にゴールネット裏から見るというのは前からやってみたかったのだ。クレインズの応援団が陣取っている場所なので、プロ野球の応援にそっくりな怒号が飛び交ったりして、かなりの迫力。プラントがゴールしたときはコクドの応援団のそばだったので、喜びをあらわにできず……。
 あ、前回、書き忘れましたが、プラントとヴァネクはどちらもミネソタ大学出身なのですね。ヴァネクはオーストリアからホッケー留学してたのですが。

追記
 昨日活躍したのにいなかった選手は、私が入る直前に負傷していたらしい。コクドの試合はやけにペナが多いと思ってたが、コクドって荒っぽいのかね。プラントが3回もペナ取られたのも、応援団が怒号を浴びせてたのも、このせいか……。
 2ちゃんねるを見たら、コクドの選手とポディーン(本日初ゴール)の乱闘が期待されていた(笑……っていいのか?)。


26番 05/9/25

 セイバーズのかつての26番、デレク・プラントの出るアジアリーグ開幕戦を見てきた。第1試合はコクド対王子製紙、第2試合が日光神戸アイスバックス対日本製紙クレインズ。バックスには元アバランチのショーン・ポディーン、クレインズにはプラントと、2人の元NHL選手の対戦が話題、というわけで、プログラムには2人のNHL時代の写真がそれぞれ1ページずつ出ていたのだが、プラントの説明が「99年にセイバーズでカップ・ファイナルに進出」。あのう、「99年3月にスターズにトレードされて、そこでカップ獲得」なんですがぁ。ポディーンの方には「アバランチでカップ獲得」と書いてあるからこっちも書いてよ。
 んでもって、最初はオーナーに名乗りをあげていたポディーンは、さすがに記事でも大きく取り上げられているが、プラントはほんの数行。多分、急遽、入団が決まったので、取材をする余裕がなかったのだろう。プラントは昨季はセイバーズのヘヒトも参加していたドイツのマンハイムにいたらしいので、そこをクビになったんだろか。なんで日本に来たのか知りたいぞ。余談だが、マンハイムは昨季、プレーオフのファイナルで敗れ、優勝を逃したのだが、クレインズも昨季はファイナルで敗れてるらしい。
 んなわけで、ポディーンに比べてプラントは宣伝不足なのか、試合開始の前に選手が登場するとき、ポディーンには一段と大きな拍手喝采があったのに、プラントには何もなしだった。まあ、バックスのファンがすごいってのもあるけど。しかし、バックスもクレインズも応援がまるでプロ野球みたいで、スタンドの一角に陣取って鳴り物入りの応援なのだ。コクドと王子も一角に陣取って、コクドはレオ・マークの旗振って応援してたけど、バックスとクレインズに比べればかなり静かだった。
 さて、試合はプラントとポディーンのフェイス・オフで始まった。プラントはその後もフェイス・オフになるとよく出てきて、まるでフェイス・オフ・スペシャリストという感じである。そういえば、NHL公式サイトの映像で見たプラントのゴール・シーンに、ゴール前のフェイス・オフから一気にゴールにたたき込んだのがあったっけ。あれはすごかったな。この日の試合でも、フェイス・オフはけっこう勝ってるように見えたけど。
 プラントがすばらしかったのは、どうやら、セイバーズでの数年間だけだったらしい。その間は、ケガで欠場のラフォンテーヌの穴を埋める活躍をしたりして、成績もいい。しかし、スターズへトレードされたあとは上と下を行ったり来たりで、すぐにヨーロッパへ行ってしまったようだ。NHLで活躍できなくなってからすでに7年たっているのと、やっぱり、セイバーズのようなチームにいると日本では有名になれないんだろうなあ(ひがみ)。
 試合はクレインズの一方的な勝利で、最後の5点目のアシストをプラントがした。専門的なことはわからないけど、プラントの動きを見てると楽しかった。日曜の試合も見に行こうかなあ。1試合だけなら立ち見でもいいし(雨にもかかわらず、土曜は盛況だった)、いろんな角度から見たい。それに、指定席って、評論家が多くてな。
 なお、セイバーズの現在の26番は、これまでにも何度も書いた期待の新人トマス・ヴァネクである。今季は2人の26番に期待しよう。


永久欠番の噂 05/9/24

 アダム・デッドマーシュが引退した。私には、ドゥルーリーの元チームメートということくらいしかわからないが、NHLのトップ10映像に2人が映っているのを見た記憶がある。脳震盪で引退かという噂は以前からあったようだが、最初に伝えたのが「デンヴァー・ポスト」というのも……。
 たび重なる脳震盪で若くして引退を余儀なくされた選手に、パット・ラフォンテーヌがいる。数年前に殿堂入りしているが、セイバーズのホームでの開幕戦、対アイルズ戦でラフォンテーヌの16番を永久欠番にするのではないかという噂が伝わってきた。ラフォンテーヌはもともとアイルズの選手だったので、バッファローでの開幕戦で、アイルズの選手たちの前で欠番のセレモニーをするのは理にかなっている。
 ラフォンテーヌは年俸でごねたかなんかでアイルズからセイバーズにトレードされ、かわりにピエール・タージョンがアイルズに行った、という話は前に書いた。結局、セイバーズでは6シーズン、プレーしたものの、そのうちフルに活躍できたのは3シーズンだけだったということで、欠番にすることに反対するファンもいる。しかし、多くのファンは、彼の印象度の高さ、地域への貢献の大きさなどから、欠番にすることを望んでいる。
 ラフォンテーヌは97年オフにレンジャーズにトレードされたが、その理由は、脳震盪のためにプレーできるかどうかわからず、しかも年俸が非常に高かったので、セイバーズはドクターストップをかけてしまった。そのため、現役を続けたいラフォンテーヌはトレードを志願することになったのである。しかし、移籍先のレンジャーズでも脳震盪を起こし、その後、引退することになった。このことで、ラフォンテーヌはセイバーズを恨んでいるのではないかと思われていたが、昨年12月に彼が主催したチャリティOB試合で、すでにセイバーズとは和解していることが明らかになった。また、このときに現在のオーナーとも協力関係を築いたようである。16番の欠番は、このときから動き始めていたのだろうか。
 以上はまだ、噂の段階で、ネットには何も出ていないということを付記しておきます。


オベチキン登場 05/9/22

 現地時間9月21日、ワシントンで行なわれたセイバーズ対キャピトルズの試合。セイバーズは4対0で勝利した。ゴーリーのミラーがシャットアウト、ヴァネク(日本ではバネクって表記になっちまうのだろうね)が2ゴール。他の2ゴールはロリー・フィッツパトリックとマキシム・アフィノゲノフ。
 この日の話題はルーキー、オベチキンが初登場したことと、前輪のあたりから火を吹きながらロサンゼルスの空港に着陸する航空機の様子がテレビで生中継されていたこと(掲示板の実況だと、こういうところまで実況されてしまう)。飛行機は無事着陸。オベチキンはしょっぱなにペナを取られ、結局、1シュートでゴール失敗(ミラーがみごとなセーブだったそうな)。しかし、シュートアウトではゴールを決めた。これがこの日、ミラーが決められた唯一のゴール。オベチキンはやはりすばらしいらしい。
 掲示板の実況の途中で、誰かがケガをしたらしいと書かれていたのだが、デレク・ロイが歯を折ったようである。実際に試合を見た人があとで書き込んでいたが、パワープレーがだめなことを指摘していた。
 ミラー、ヴァネク、オベチキンと、新時代を感じさせる試合だったようだが、とりあえず、ゴーリーはミラーが一歩抜きん出ているようだ。もしもミラーがスターターだと、ビロンをバックアップにするわけにいかないので、ビロンがトレードという説も出ている。ただ、今のところ、ケッセル争いをしそうなチームとばかりなので(セイバーズもその争いの候補です)、日曜から始まるカップ・コンテンダーたちとの3つの試合がゴーリーたちの正念場だろう。


ミカチュー…… 05/9/21

 ミカチュー(笑)ことミカ・ノロネンが出場した9/20のミネソタ戦。1ピリでブリエア2ゴール、ジルソン1ゴールで3対0とリードしたにもかかわらず、2ピリと3ピリで6点も取られてしまった。その間、アイルズ対レンジャーズがディレクTV(日本ではとっくになくなってるが)で放送されてて、ジトニク2ゴールって……。
 ミカチュー、やっぱりトレードか、でも、どこが取ってくれるんだ、てな感じになってきたが、2ピリと3ピリ、フォワードとディフェンスは何やってたんだろう。
 セイバーズ公式サイトが、選手が近況を書くブログを始めた。トップバッターはビロン。

 この期に及んで4年ぶり7連勝の横浜ベイスターズ。7連勝の中には対巨人3連勝が入ってるのだけど、横浜は最下位でも巨人には勝ち越してたり、かと思えば、阪神が最下位のとき(ずいぶん昔のことのように思える)でも阪神には負け越しとか、変なチームだったのだが、今のように阪神が首位、巨人が下位では、当たり前の話になってしまう。それにしても、シーズンが始まったときは今年も最下位かと思ってたのに、クルーン様様かしらん。

 セイバーズは今季はワシントンとドラフト全体1位を争うと予想されてるわけだが、ケッセルとかいう子がクロスビーに匹敵するくらいいいらしいので、どうせなら中途半端なところよりは最下位の方がいいかもだ。そのクロスビー、「Vanity Fair」に写真と短い記事が出ていた。裸の上半身に破れたベストみたいなのを肩からはおっているという、ヘソ出しルックである。そういえば、アメリカのスポーツ雑誌はどこもNHLの記事を載せなくなっているような気がする。


アトランタの暗雲? 05/9/20

 何かと注目を集めているアトランタ・スラッシャーズだが、ここに来て暗雲が……。AHLのナンバーワン・ゴーリーで、今季はスターターで新人賞受賞かも、と一部で言われていたカリ・レトネン(発音、間違ってるかもしらんが)が練習中に鼠蹊部のケガ。前にも何度かやってるらしいけど、ここはレンジャーズにいたダンハムがいてあとは……てな感じなのだ。うちのゴーリー、1人もらってくれないかなあ、と、セイバーズ・ファンが言っている(だからアトランタには詳しくなるのよ)。
 でもって、ボンドラとの契約が正式に発表。決まったというニュースが流れてからずいぶん時間がたっているので、ボンドラ、どうなってんの、とファンには思われていたのだが、基本給50万ドル余りに出来高ボーナスが全部出ると合計で340万ドルだそうだ。アトランタに決まったというニュースが出る直前までワシントンと交渉という噂がずっと流れていたのだが、ワシントンはあまりお金出したがらなかったらしい。アトランタはこれでキャップスペースがまた狭くなったので(ボンドラの場合はボーナスもキャップに含まれる)、やっぱりコヴァルチャクはロシアか? ヒートリーのトレード要求から始まって、GM、頭痛いね。(出来高ボーナスは来年の分になるという話もあるが、この辺、まったくフォローしてないのでわからん。セイバーズには関係のないことだし。)

 元セイバーズのバックアップ・ゴーリー、シールズがアナハイムのトライアウトを受けているらしい。実はUFAのゴーリーでまだ余っているのがけっこういるのだ。だから、ゴーリーのトレードがむずかしいのである。

 セイバーズはやたらオープン戦が組まれていて、しかもずっとロードなのだ。土曜日はホームだったが、日曜からしばらくロード。13日間で8試合とかって、大丈夫かね。次は火曜日のミネソタ戦。相変わらず、バッファローは放送何もないので、ミネソタのネットラジオが頼りのようだ。とりあえず、2試合やって2勝したので、今だけディヴィジョン首位である(だって、ほかはまだろくに試合してないんだもの)。


オープン戦9/18 05/9/19

 コロンバスの本拠地で行なわれたセイバーズのオープン戦2戦目。ティム・コノリー、ミラン・バートヴィック、マイケル・ライアン(写真)がゴールして、3対2で勝利した。ゴーリー、ミラーは3ピリで2点取られたものの、2ピリまでは絶好調だった模様。コロンバスのゴーリーはオタワをクビになったプルシェックで、2点取られたところで交代。シュートアウトはどちらも3の1だった。
 コロンバスはナッシュがケガで出場してなかった。セイバーズも前日の主力、ブリエア、ヴァネク、テッポなどは出ていない。ドゥルーリー、ヘヒト、アフィノゲノフ、ロイといった主力は出ていたが、オープン戦はロースター入りがかかっている若手や新人ががんばるようだ。ゴーリーはノロネンが遅れを取っているようで、ビロンとミラーに決まりそうな感じである。
 相変わらず、バッファローではテレビもラジオも何もなかったようで、コロンバスのネットラジオが頼り。オープン戦は勝つのが目的ではないので、まったりとやっているようである。


オープン戦9/17 05/9/18

 現地時間9月17日、バッファローで行なわれたオープン戦、キャピトルズ対セイバーズで、セイバーズが3対2でOT勝利した。
 テレビもラジオもネットラジオもなく、ファンはキャピトルズのサイトのラジオを聞いていたらしいが、これが受信できなかったり、具合が悪かったり、アナウンサーはビロンをビーロンと発音したり、と、いろいろだったらしい。HSBCアリーナは入場者数17000人以上の盛況だったとか。
 試合は1ピリにキャップスが先制、3ピリにようやくセイバーズがコタリクのゴールで同点に追いつき、また1点リードされ、そしてヴァネクのゴールでまた同点に。そしてOTで再びヴァネクがゴール。アシストはブリエア。で、3対2で勝ったのだが、オープン戦は勝敗に関係なく、最後に3対3のシュートアウトが行なわれる。そこでもヴァネクがゴール。ビロンは3本すべて止めた。
 とまあ、幸先のよいスタートではあったのだが、実はキャップスはNHL選手が3人しかおらず、セイバーズは10人以上いたので、そんなチームに苦戦して、何やってんだ、こいつら、なのだった。もっとも、キャップスのゴーリー、コルズィグが2ピリまで守ってシャットアウト、そのあとバックアップに代わったら点が取れたというわけで、コルズィグがよかったんでしょう。しかし、ほかのオープン戦は1チーム当たり7点とか8点とか入ってるのに、ここだけは点の入らない旧NHL。
 18日はコロンバスでオープン戦。ゴーリーはミラーらしい。

 セイバーズのドラフト1巡目で、ドラフト全体1位でもあったピエール・タージョンが今季からアバランチに参加しているが、「おれはフォシュベリじゃないけど」うんぬんと語ったというニュースが伝わってきた。なんでもセイバーズに来たときは、「おれはジル・ペローじゃないけど」とかなんとか言ったらしいので、きっと口癖なのだろう。ラフォンテーヌと交換でアイルズに行った頃は活躍した選手だったらしいが、アバランチでもそこそこやってくれれば……。


ジェームズ・モリス 05/9/18

 久しぶりにクラシックの話題を。
 9月24日のアジアリーグ開幕戦のチケットを買うためにチケットぴあに登録したら、11月に東京で上演されるオッフェンバックのオペラ「ホフマン物語」のお知らせが。「ホフマン物語」といえば、私の一番好きなオペラなのだ。プラシド・ドミンゴ主演のLDにCD、それに、大好きなイギリス映画「ホフマン物語」のLDもある。そして、忘れられないのは80年代末に来日したメトロポリタン歌劇場の公演。主役のホフマンはもちろん、ドミンゴ。そして、悪役はジェームズ・モリスだった。
 ホフマンというのはドイツの実在の詩人・幻想文学作家。若き日のホフマンが女性遍歴の果てに詩人になるまでを描いたオペラ(もちろん、フィクション)である。プロローグと3つのエピソードから成り、それぞれのエピソードにホフマンの恋人と、彼女を奪っていく悪役が登場する。3人の恋人と3人の悪役は、それぞれ同じ歌手が演じる場合と、別の歌手が演じる場合があるが、メトの公演で見たのは3人の恋人は別の歌手、そして、3人の悪役はすべてジェームズ・モリスが演じた。
 モリスは当時、同じくメトのワーグナーの「ニーベルングの指環」の第1部「ラインの黄金」、第2部「ワルキューレ」でヴォータンを歌っていて、売り出し中のバス・バリトンだったのである。「ホフマン物語」でファンになって、「ワルキューレ」も好きだったのだが、その後、バブルが崩壊してオペラに金を貢ぐ余裕がなくなり、モリスがどうなったのかもわからなくなった。
 そのモリスが、11月の公演でまた「ホフマン物語」の悪役を演じるという。ヒロインは日本の歌手で、チケット代も一番高い席で21000円と、オペラにしては比較的安い。演出もメトとは違って面白そうではある。しかし、かつてはオペラに4万円も出した私も、今は2万円でも考えてしまう。メトの公演から17年くらいたっているが、モリスはどうなのだろうか。あのとき、共演していたメゾソプラノの奥さんとは今も一緒なのかなあ。なんだか浦島太郎のような気分だ。


セイバーズのキャンプ 05/9/17

 今週月曜から始まったセイバーズのトレーニング・キャンプ。一般に公開されているので、掲示板にはいろいろ情報が書き込まれている。その中でギョッとしたのが、ファースト・ラインのウィンガーであるJ・P・デュモンがぶっ倒れて氷に顔面をぶつけたというニュース。血がどばっと出たので心配されたが、何針も縫ったけれど脳震盪はないとのこと。
 リンディ・ラフHCは、今季のキャプテンにドゥルーリー(写真)とブリエアの2人を指名。「ったく、3人のゴーリーを2人に絞れない上、キャプテンをどちらかに決められないなんて、ウルトラ民主主義の幼稚園だ」という声が上がっていたが、キャプテンはドゥルーリーがいいかブリエアがいいかというのは、3人のゴーリーの誰がいいかと同じくらい、ファンの間でも意見が分かれている。ブリエアが成績、人気ともにトップの選手になり、リーダーシップも発揮してきたのはうれしい誤算だろう。どっちかというと、ブリエアがキャプテンの方がよさそうな感じがするのだが、ドゥルーリーをキャプテン候補として獲得したので、こっちも立てねばならず、というところか。タイプも役割もまったたく違うので、お互いに補い合っていい効果を上げてくれればいいけど、2人が対立するようになると困るし……。
 実はキャンプ初日、メディアの関心はもっぱらシャターンのことだったのだが、ドゥルーリーとブリエアが、「シャターンはチームの誰ともうまくいっていなかった。出た方が彼のためにもチームのためにもよかった」などと発言して物議を醸している。特にブリエアはシャターンを批判するようなことを口にしていて、それがテレビやラジオでまで流れたらしい。コヨーテズ時代の先輩、JRのような舌禍にならないといいが。
 「うまくいっていなかった」というのはあくまでプレーの話であって、シャターンの人間性のことではない。人間としてはファンをだいじにするいい人だったみたいだけど、プレーの上では、センターのブリエアやドゥルーリーをイライラさせる選手だったようだ。具体的に言うと、シャターンはゴール前がごちゃごちゃしていると、そこへ飛び込んでいかない。パスを出すセンターとしては、そういうウィンガーは困るのだろう。
 ただ、ドゥルーリーやブリエアはシャターンとは1シーズンしかプレーしておらず、そのシーズンはシャターンが一番ふるわなかった年だと思うと、長年、セイバーズでがんばった選手に対して最近来たばかりの2人がいろいろ言うのはどうかという気もする。なんにしても、アイルズとの開幕戦は荒れそうだ。
 再契約オファーを出されなかった直後にセイバーズの悪口をさんざん言ったシャターンに対し(彼の悪口に比べたら、ドゥルーリーやブリエアの言葉はおとなしい)、ジトニクはまったく悪口は言わず、むしろ、「セイバーズはすばらしいチームだった」と言って、ファンの尊敬を集めている。ブリエアも、ジトニクの役割がいかに大きかったかを別のところで語っていた。選手は去り際がだいじなのだ。


ポランスキーとイギリス文学 05/9/14

 「戦場のピアニスト」でアカデミー賞監督賞を受賞したロマン・ポランスキーの新作は、チャールズ・ディケンズ原作の「オリバー・ツイスト」。過去に何度も映画化され、ミュージカルにもなっているが、私の世代はオリバー・ツイストというとマーク・レスターの顔が目に浮かぶ。
 ところで、なぜ、今、ポランスキーがディケンズを? 確かにポランスキーはこれまでも、シェイクスピアの「マクベス」やトマス・ハーディの「テス」といったイギリス文学を映画化している。
 「マクベス」はポランスキーの妻で女優のシャロン・テイトが自宅で狂信的なグループに惨殺された直後に作られた。マクベス夫人が全裸で登場したり、血なまぐさいシーンが続出したりと、妻の惨殺事件にそのまま向き合ったような内容だったが、シェイクスピアの映画化としても非常に優れていて、私は好きである。
 「テス」はそれから10年ほどの歳月がたったあとに作られた。もともとシャロン・テイトの愛読書だったというこの小説を、ポランスキーは思う存分ロマンチックな映画にしている。不幸な人生の果てに殺人を犯し、死刑になる運命のヒロイン、テスに、ポランスキーはシャロンを重ね合わせた。映画の最後に、「シャロンに」という献辞が出る。死すべき運命の妻への思いは、実は原作者ハーディの思いでもあった。原作者の思いとポランスキーの思いがみごとに合体した傑作である。
 「オリバー・ツイスト」もまた、ポランスキーの人生を感じさせる。子供の頃、ポーランドでホロコーストを体験したユダヤ人の彼は、前作「戦場のピアニスト」のホロコーストを生き延びたピアニストに自分を重ね合わせていた。そして、「オリバー・ツイスト」では、彼は盗賊の一味に翻弄される孤児に自分を重ね合わせているように見える。孤児院で虐待され、そこを逃れて盗賊の一味になり、そこを救われてお金持ちの家に身を寄せるが、盗賊一味は彼を連れ戻し、という、オリバーの数奇な運命は、ホロコーストの時代に翻弄され、ひたすら逃げていた「戦場のピアニスト」の主人公そのものだ。ラスト、盗賊一味のボスと再会したとき、彼の流す涙も、あの映画を思い出させる。
 モノクロの精密画に始まり、精密画に終わるこの映画は、「戦場のピアニスト」と同じくセピア色の抑えた色調になっている。決して微笑まないオリバーの思い詰めた表情は、あのピアニストと同じものであり、写真で見るポランスキーの老いても少年のような表情によく似ている。


デレク・プラントとジェイ・マッキー 05/9/12

 テッポとトニが来たのと、パトリックが引退したの以外、何もニュースがないセイバーズだが、とりあえず、お知らせすることはお知らせしておこう。

 まず、RFAの契約が最後まで滞っていたジェイ・マッキーが、結局、1年契約となった。マッキーはケガで2シーズン、かなりの試合を欠場しているので、チームは1年契約をオファーしたのだが、マッキーは複数年を希望、それでもめてたというか、トレード先を探してたというか……。マッキーは来年、UFAになるので、本来なら1年契約の方が有利なのに複数年希望って、やっぱ、だめなんじゃないの、と素人の私でも思ってしまうわ。

 次は、わが日本の、というか、友人が住んでいる釧路の日本製紙クレーンズに元セイバーズのデレク・プラントが加入。てことは、友人の家に泊まらせてもらって見に行かないといかんのか。ついでに東京のコクドとの試合も……こりゃあ、いい。
 プラントについては前にこのブログでも取り上げたので、そのページを見てもらえばいいんだけど(そこにあるリンク先がまだ有効なら、97年プレーオフでの彼の素晴らしいゴール・シーンが2つも見られます)、詳しいプロフィールはこちらへ。最近はドイツでプレーしていて、昨季はマンハイムだから、セイバーズのヘヒトと一緒だったのね。
 プラントはセイバーズがカップ・ファイナルに出場した99年のレギュラー・シーズン終盤にダラス・スターズにトレード、そして、スターズはセイバーズを敗って優勝したのだが、プラントはヘルシー・スクラッチでファイナルには出場はしていない。


「マリア」ある歴史ロマンス 05/9/12

 最近、書店で、講談社のホワイトハートという文庫をあまり見かけなくなったが、どうしたのだろう。これは少女向けのライトノベルの文庫で、ここから小説を出している知り合いの作家が2人いる(いた)ので、時々、興味を持って見ていたのだが……。
 そのホワイトハートから10年ほど前に出たという、榛名しおり著「マリア/ブランデンブルクの真珠」を読んだ。講談社の新しい文庫、F文庫というのから出ているのだけど、これも書店にあまりない。やる気あるのか、講談社?
 で、この「マリア」という小説、ひとことで言うと、歴史ロマンスなのだが、これがとても面白かった。17世紀なかば、ドイツがまだ統一国家ではなかった群雄割拠の時代、ブランデンブルクの若き選帝侯フリードリッヒ・ウィルヘルムという実在の人物を主人公に、彼の愛人となった少女マリアの数奇な運命を描いている。
 とにかく、ストーリーがとてもよく出来ていて、感心した。この手のロマンス小説は先が見えてしまって、途中でやめたくなることが多かったのだが、これは先の展開が読めず、思いがけないことが次々と起こるので、まったく飽きることがなかった。ロマンス小説なので、当然、女性の願望成就的なところが多いけれど、描写がさらりとしているので、気にならない。少女の成長を描く歴史小説として、大人の鑑賞に十分耐える小説だ。後半がミステリー仕立てなのもうまい。
 ところで、90年代前半、私はコミック・マーケットなどで自作の小説や映画評論集を売っていた。その頃にこの手の少女向けライトノベルを書いているプロやアマの作家に出会ったのだが、彼女たちからこの手の文庫の編集者の悪口をよく聞いた。少女小説に限らないことだが、編集者は売るために作家やライターにさまざまな注文をつける。中でも少女小説や少女漫画の世界は女の気持ちもろくにわからない男の編集者がいちいちイチャモンつけてくる、と、彼女たちは感じていたようだ。
 で、その、彼女たちが嫌がる注文の1つが、「強い女性を描かなければならない」ということ。
 この「マリア」という小説は、登場する女性がすべて強い。それも精神的に強いとかたくましいとかいうだけではなく、武術の名人だったり、ゲリラのリーダーだったり、策謀家だったりと、男がやるようなことをみんな女がやっている。確かに、「ヒロインは強くあるべし」と考える私でも、ちょっとやりすぎなか、と思わないでもない。編集者が要求する強い女性がこういう外見的なものばかりだったら、作家がいやになるのもわかる。
 ただ待つだけの女はいや、行動する強いヒロインがいい、と思う私だが、女性の強さが武術や地位のような外見的なものに終始するのはいやだ。「マリア」がいいのは、ヒロインの強さが内面的なものだと思えるからである。


待つ女の物語 05/9/10

 ホッケー本を2冊続けて読んだので、次は普通の小説を読もうと、オードリー・ニッフェネガーの「タイムトラベラーズ・ワイフ」を読んだ。アメリカでベストセラーのリストに載り、映画化権も買われ、日本でも読んだ人の間では評判がいいらしい。でも、近所の図書館で探したら、あまり借りられてないようだった。翻訳なのですぐに読めてしまった。
 ひとことで言うと、「待つ女」の話だなあ、と思う。ヒロインが6歳のときから未来の夫が何度も彼女の前に現れ、愛が高まっていき、20歳のときについに現在の彼に会って結婚。しかし、本人の意志に関係なく、ストレスでタイムトラベルしてしまう夫はその後も消えたり戻ってきたり。そしてついに悲劇が……という内容。
 ヒロインも夫もお金持ちの家に生まれ、高い教養を持っている。んなわけで、名作文学やクラシック音楽の話題や引用がひんぱんにある。名作文学とクラシック音楽は私の守備範囲だから、ついていくのは何の問題もない。翻訳の注の入れ方に一貫性がないのが気になるし、訳し方もときどき首をひねるものがあるけど、別に支障はない。でも、私の好きなものが出てくる、うれしい、という感じにはならないのだ。むしろ、こういうものにだけ囲まれたオタク世界に少々うんざりする。たとえば、ここにはスポーツの話題はまるで出てこない。集まった人たちがアイスホッケーの話を始めると、ヒロインはその場から逃げ出す。
 誤解を恐れずに言うと、きわめて女っぽい世界なのだ。アイスホッケーの話題から逃げ出す、というのがまさにそれで、ここには男っぽいものは皆無と言っていい。タイムトラベルも辻褄合わせに終始しているところがあるし、結局、タイムトラベルそのものについての考察ではなく、気まぐれな男を待ち続ける女の姿を描く1つの手段なのだと思う。
 いついなくなり、いつ戻るかわからない男をひたすら待つ女(男はもちろん、女のもとに戻りたがっているのだが)。こういう保守的な女性の姿が最近の小説に多い。古い時代にはこういう立場に置かれる女性が多かったが、逆にそういう時代の方が行動する強い女性をヒロインにしていたと思う。しかし、女性が(不十分とはいえ)解放された今、こういう保守的な女性像が流行るようになっているのだろうか。面白い小説であることは間違いないし、「待つ女」の愛に感動し、彼女を愛する男の愛に感動することが悪いとは言わないけれど……。


James Patrick引退 05/9/9

 まだWGR550とTSNに短いニュースが出ただけですが、セイバーズのディフェンスで42歳のジェームズ・パトリックが引退を発表。昨年オフにUFAになり、昨季があればもう1年プレーする予定でしたが、ロックアウトでシーズンがキャンセルされ、今季はもう契約されないということで引退となったものと思われます。昨季がなければもう引退、と、以前から言われていましたが、これで99年カップ・ファイナル組がまた1人、姿を消しました。今後はセイバーズのコーチング・スタッフとしてバッファローに残る予定。
 パトリックといえば、03/04シーズン終盤、プレーオフ進出をめざして連勝を続けていた3月、ずっとネットラジオで試合の中継を聞いていたときのこと。3月末のマジソン・スクエア・ガーデンでのレンジャーズ戦はMSGでのメシエの最後の試合になるかもしれないということで、ちょっと異様な雰囲気でした。セイバーズはなんとか勝ちましたが、試合終了後、まるでメシエ引退セレモニーみたいな展開になったのです。レンジャーズの選手だけでなくセイバーズの選手もリンクの上に並び、そして、レンジャーズ出身のパトリックが真っ先にスティックで氷をたたいてメシエに敬意をあらわしたのでした(見たように書いてますが、もちろん、ラジオの実況で聞いたのです)。
 メシエはまだ引退を表明していませんが、The Fourth Periodによると、やはり引退がささやかれているようです。
 パトリックはレンジャーズが優勝したシーズンの途中で不運にもトレードされてしまったのですね。その後、ハートフォード・ホエイラーズ、カルガリー・フレームズ、そして、98年にセイバーズへ来たのでした。

追記 詳しい記事


セイバーズとNHLの最新ニュース 05/9/8

 年俸450万ドルで15年契約のオファーなんて、ミルベリーGMはクレイジーだ、と言われたアイルズのゴーリー、ディピエトロですが、年俸250万ドルで1年契約になったようです。しかし、この落差はいったい、なに?
 アイルズに行った元セイバーズ、シャターンとジトニクはセイバーズの練習場であるアムハーストのペプシ・センターで練習をしました。ここはバッファロー地域に住む元セイバーズの選手たちも練習に利用している場所です。再契約オファーを出されなかった直後は悔しさをあらわにしていたシャターンは、その後、アイルズからおいしい契約をもらってホクホクのようで、「再契約してからトレードした方がセイバーズは得だったのに」と余裕のコメント。一方、最初からUFAで、一番いいオファーのアイルズを選んだジトニクは、「セイバーズはすばらしいチームだった」と、こちらも余裕のコメント。実はアイルズは、セイバーズの地元での開幕戦の相手。つまり、因縁の試合になるのは間違いないのです。
 出て行った選手の話題を取り上げる「バッファロー・ニュース」に対し、「デンヴァー・ポスト」はチームUSAのキャンプに参加したドゥルーリーを取り上げています。また、トロントの「グローブ・アンド・メール」はNHLの今後について、ブリエアのコメントを載せています。どうして「バッファロー・ニュース」はドゥルーリーやブリエアや、新しく来たテッポやトニを取材しないのかと思ってしまう。
 UFA選手獲得競争とトレードに続き、今度はベテラン選手の引退のニュースが。ニーダーマイヤーとスティーヴンスを失ってしまったデビルズはいかに……? でも、まだ、年俸総額、キャップの上限を越えているのでは?
 セイバーズの”3人のゴースト”ならぬ”3人のゴーリー”、早く1人減らさないといけないのですが、減らされるのはノロネン、と、比較的最近までは思われていました。しかし、ここに来て、ノロネンはテッポと同郷で、しかも、トニと一緒にプレーしたことがある、ということで、新たに加わったフィニッシュ・ラインとの関係で、ノロネンは残すのではないかという説が急浮上。しかし、度胸が座ってるのはビロン、将来性はミラーと、甲乙つけがたい。コーチング・スタッフも3つに割れているのでは、と、ファンは予測しています。


海外TVドラマ・ベスト10 05/9/6

 現在発売中の「キネマ旬報」9月下旬号で、海外TVドラマ・ベスト10というのをやっている。で、上位入選作品を見たら、「ER」以外はすべて、私が見ていたドラマじゃないの! おまけに、大好きな「タイム・トンネル」に4票も入ってる! 私しか覚えていないと思っていた「コロネット・ブルーの謎」にも1票入っている! きゃあ、きゃあ、きゃあ。
 私が投票してたら、「タイム・トンネル」、「コロネット・ブルーの謎」、「プリズナーNO6」、「インベーダー」は確実に1票多く入ってたわね。これ以外だと、「ララミー牧場」とか(あの淀川長治の解説!)、「ミステリー・ゾーン」とか(あの音楽!)、「ヒッチコック劇場」とか(あの吹き替えの声!)、「ローハイド」とか、「スーパーマン」とか、「コンバット」とか、そしてもちろん、「奥さまは魔女」も見てましたわよ。ああ、「ナポレオン・ソロ」に「サンダーバード」、「スパイ大作戦」に「宇宙大作戦」に、ああもう、あの辺の、60年代テレビドラマはすべてなつかしい!(トシがばれるが、この際、どうでもよいわっ! あ、でも、実は再放送、というのも多かった。)
 しかし、ミニシリーズの「ホロコースト」は入っていないのかね??? 「空飛ぶモンティ・パイソン」の話はこの前、したよね(この辺は70年代)。
 私の場合、テレビドラマはだいたい中学時代まで。この頃までのはものすごく見ている。でも、そのあとはあまり見なくなり、ずっと見てたのは「刑事コロンボ」だけ(ピーター・フォークにははまりました)。最近では、「ダイナスティ」を途中から見てけっこうはまった。「ツイン・ピークス」は逆に途中で挫折。あとは、「アリー・マイ・ラブ」をちょっと見たくらいか。年とともに、熱意がなくなるのだ。
 それぞれのドラマについては、また改めて書こう。「タイム・トンネル」、「コロネット・ブルーの謎」、「インベーダー」、「プリズナーNO6」については絶対に書かねばならん。
 あと、あまり見ていなかったのだけど、ファラ・フォーセットのダンナだった人(リー・メジャース)がやってた「600万ドルの男」ってのがありましたね。ジム・キャリーでコメディにして再映画化という話があるけど。あれもちょっと面白かったな。サイボーグになった男が主人公で、最初に、「その費用600万ドル」というナレーションがあるのが笑えたのだった。


しょうもない話。 05/9/5

 NHL公式サイトにセイバーズの今季のプレビューみたいなものが出たのだが、ファンが一番期待している選手、トマス・ヴァネクのヴの字も出てこないという、まったくしょうもないプレビューである。こういうのを日本のライターが鵜呑みにして日本語のサイトにそのまま書いたりするなんてことがないよう願いたいもの。セイバーズについては、掲示板のコアなファンの書き込みを読んだ方がよっぽど役に立つ。

 しょうもないといえば、リニューアルしたセイバーズの公式サイトと付属の掲示板もすこぶる評判が悪い。文字がすごく読みづらくなったので、私もあまり見なくなってしまったが、付属の掲示板は以前はとてもよかったので、残念でならない。以前の掲示板はジム・ボブという人物が管理人をしていて、コアなファンによる非常にレベルの高い議論が行なわれていたのだ。私がセイバーズについて、そして、昨季のロックアウト問題について、詳しく知ることができたのはここのおかげが大きい。特に管理人のジム・ボブの適切な意見はとても役に立った。
 ところが、公式サイトがリニューアルされたあと、この掲示板がハッキングされてしまい、その後、新たにできた掲示板はもはやジム・ボブが管理人ではない、まったくの別物になっていた。そして、新たな掲示板の書き込みときたら、もう、しょうもないスパムカキコばかりになってしまったのだ!
 セイバーズの掲示板には、ほかに、SabresFans.comの掲示板と、HFboardsの中のセイバーズ掲示板がある(これ以外にもあるけど、一応、大きいのはこの2つ)。公式サイトの掲示板に怒ったファンがこの2つの掲示板に苦情を書き込み、その後、公式サイトの掲示板でもこの件が話し合われて、最近はまたまともな掲示板になってきたようだ。あとは、文字が読みづらいのをなんとかしてほしい。
 SabresFans.comはゴートロードというやはりコアなファンがやっているサイトで、このサイトと掲示板は相当にコアである。それに比べると、HFboardsは玉石混淆か。実は他チームの掲示板に比べてセイバーズの掲示板はレベルが高いというか、言っちゃあ悪いが、他のチームの掲示板はレベルが低いと思っていたのだけど、セイバーズの公式サイトの掲示板が最近ひどいという話題が出たとき、他チームのファンが「うちのはもう何年も前からしょうもない掲示板だ」とか、「うちのがあまりにひどいからここを読みに来ているのだ」とか書き込んでいたのを見て、やっぱりそうだったのか、と思った(いや、もちろん、セイバーズ以外でもレベルの高い掲示板は探せばあるのでしょうが)。
 というわけで、ファンはコアなのだが、チームは相変わらずしょうもないというか、99年カップ・ファイナルの最後の生き残りとも言うべきジェイ・マッキーの契約でもめている。つうか、トレード先を探しているらしいのだが、シャターンといい、マッキーといい、なんかこう、フラストレーションのたまるやり方なのだ。このほか、3人のゴーリーの1人をトレードすべきなのだが、マッキーとビロンをトレードして年俸総額を減らすとか、またしても金の節約の話ばかりなのである(怒ーーまだ噂の段階だけど、こう見えてしまうのが、怒)。

 話変わって、ジトニクとシャターンを獲得したアイランダーズは相変わらず景気がいい。なんでもディピエトロに年俸平均450万ドルで15年間という、信じられないオファーをしたそうな(ほんまかいな)。「またまたマッド・ミルベリーGMのクレイジーなオファー」と言われているが、ヤシンとシャターンとジトニクですでに1500万ドルになってるってのに。第一、15年もなんて、ディピエトロが迷惑じゃないか?
 アイルズはドラフト全体1位が欲しくてルオンゴをフロリダにあげてしまい、その全体1位でヒートリーが取れたのにディピエトロを取ったらしい。ヒートリーがアイルズだったら、事故も起こさず、スナイダーは死なないですんだのだろうか、なんて、余計なことまで考えてしまった。(よそ様のことなので気楽に考えてますが、ファンの方、ごめんなさい。)


感動的な結末。 05/9/4

 コンドルズのゴーリーの手記を読み終わりました。まるで映画のような結末。感動して、涙がちょっと出てしまった(年のせいで涙もろくなっているのだ)。

 アービシャーのおかげでまわってきたチャンスで、別のチームの試合の最後にちょこっとだけ出してもらえた著者は、ベイカーズフィールドに戻ればまた見学の日々。もうやめようと、一度は奥さんのいるサンフランシスコに帰ってしまうけれど、妻に励まされ、またコンドルズに戻る。すると、今度は同じリーグのライバル・チームからバックアップ・ゴーリーのレンタルの話が。そこでも出番はないまま終わり、やがてレギュラー・シーズンも終わりに近づいたとき、コンドルズのコーチが最後の試合に彼をスターターに指名する。もうプレーオフ進出は決まっていて、勝っても負けてもいい試合ではあるけれど、最後の試合だから負けたくはない。しかし、試合は劣勢、アシスタント・コーチはゴーリーを代えろと言うが、今夜は彼のための試合と心に決めているヘッドコーチは耳を貸さない。そして……。
 これが実話なの? と思うような、本当に映画のような展開。でも、本の最後に出てくるヘッドコーチの言葉、「どんなことにも理由がある」という言葉どおり、やっぱり理由があるのだ。出番がないかわりにシュートアウトの練習をたくさんしていたことが、別のチームの試合でも、そしてベイカーズフィールドでの最初で最後の試合でも役に立つ。そして、その最後の試合の相手が、レンタルされたライバル・チームだったことも(そのチームの選手を相手に練習していたのだ)。
 それにしても、「どんなことにも理由がある」というのは、「ブルース・オールマイティ」でジェニファー・アニストンがジム・キャリーに言う台詞なのだ。最近読んだセイバーズの暗黒時代(90年代半ばから破産した03年まで)を総括する記事には、「人生は不公平だ」という言葉が出てきたけれど、「神様は不公平だ」というのも「ブルース・オールマイティ」の台詞。「人生は不公平だけれど、どんなことにも理由がある」と、じっと我慢して我慢して、チャンスが来るのを待つのがバッファロー気質なのだろうか。セイバーズにヴェジナ受賞者が4人もいるのも、やはり理由があることなのか???
 ホッケー界では、バッファロー出身というと、それは骨の髄までホッケーにつかっているということなのだそうだ。バッファローで生まれ育つと、ホッケー以外にすることが何もないってことか? うーん、トロントやボストンなら、ほかにすることありそう。
 著者はその後、「Us Weekly」の西海岸支局長になり、ハリウッドのスクープを追うというタフな仕事に従事する。スクープをつかむというのは、ある意味、ゴーリーのようなものだ。待って待ってひたすら待って、その間、しっかりと準備をし、チャンスが来たらそれをつかむーーそう、パックをとめるように。
 現在もLAを拠点に、さまざまな媒体で仕事をしているというケン・ベイカー。今季はかつてのチームメート、ローニックの取材をするのだろうか。そして、将来は、福藤豊を彼が取材するかもしれない。

追記
 ベイカーは公式プロフィールでは、やはり大学時代に脳腫瘍が発見されて、それでホッケーを断念したとなっている(手術をしたのは何年もたってから)。成績が伸びなくなったのは病気のせいもあるかもしれないが、著者は病気のせいにするような書き方はしていない。また、息子がホッケー選手になることを夢見る父親の存在が大きかったようで、ホッケー界の”ステージ・パパ”というのはなかなかあなどれないと思った。


コンドルズのゴーリーその後 05/9/3

 例のベイカーズフィールド・コンドルズに帯同する3番手ゴーリーの手記、いよいよあと50ページほどになったのだが、いまだに試合には出場していない。
 シーズン前のエキシビジョン・ゲームに1ピリオドだけ出場したものの、シーズンが始まってからはベンチにも入れず、プレスボックスでひたすら見学の日々。やがて、スターター・ゴーリーが大ケガをし、1カ月以上欠場することになって、ようやくバックアップとしてベンチ入りを許される。しかし、出番がないまま、スターターが復帰。またしてもプレスボックスでの見学の日々に。
 バッファローで生まれ育った著者は14歳のときにオリンピック候補選手のキャンプに呼ばれ、16歳のときには17歳未満の世界選手権のスターター・ゴーリーとして出場、カナダを敗って優勝した。このときのチームメートがジェレミー・ローニック、マイク・モダノ、トニー・アモンテ。
 ”ミラクル・オン・アイス”のジム・クレイグの再来になることを期待され、セイバーズがドラフトしたアメリカ人のゴーリー、トム・バラッソを見て、自分も、と思った著者だが、このときを頂点に、あとは下降の一途をたどる。大学に入ると、まわりがどんどん進歩していくのに自分は進歩できず、成績も落ちていく。試合にも出場できなくなり、ついにホッケーをやめてしまう。
 本を買う前、ネットの解説で見たときは、脳腫瘍でプロへの道を断念したのかと思ったが、著者は自分の能力に限界を感じて、ホッケーをやめたという書き方をしている(ECHLのチームからトライアウトを受けてみないかという話はあったらしい)。
 その後、大学院に進んでジャーナリストの勉強を始めた彼は、雑誌にニューヨーク・レンジャーズの記事を書くアルバイトをする。そのとき、遠征に来たダラス・スターズのモダノに再会。ホッケー選手になれずにホッケーの現場にいることのつらさを感じる。
 こういう話は過去の自慢話だと思う人もいるだろう。でも、夢の実現を信じた時期があり、実際、信じられる位置にいた人間が、結局、夢を実現できずに終わる、その気持ちが私には痛いほどよくわかる。この著者の場合、脳腫瘍の手術を受けたことが、プロでプレーするという夢を追う決心をさせたのだろう。
 チャンスは思いがけないところからやってくる。コロラド・アバランチのデヴィッド・アービシャーがオリンピックのスイス・チームに参加することになり、ゴーリーが順番に上に上がるので、ハーシー・ベアーズと提携する下位リーグのチームのゴーリーが足りなくなった。そして、このチームのGMと連絡を取っていた著者のもとに臨時のバックアップ・ゴーリーの依頼がくる……
 というところまで読んだのですが、果たして著者はプレーできるのかどうか……。