2005年8月31日

2005年8月

モンティ・パイソンとスパム 05/8/31
「宇宙戦争」 05/8/29
ベイカーズフィールドのゴーリー 05/8/28
バッファローの場合 05/8/28
テリー・ギリアムの新作ほか 05/8/24
続・ホッケー小説 05/8/23
どうでもいい話題 05/8/22
あるホッケー小説 05/8/20
ニュースの見出し 05/8/16
舟を漕ぐ映画 05/8/15
困ったハリウッド映画 05/8/13
Summer of Stanley 05/8/9
あーあ。 05/8/6
フリー・エージェント狂想曲 05/8/5
「チャーリーとチョコレート工場」 05/8/2


モンティ・パイソンとスパム 05/8/31

 スパム・メールについての解説を読んでいたら、なんと、語源は缶詰会社の商品名で、それがテレビ「モンティ・パイソン」で使われて、まともなコミュニケーションができなくなる迷惑なものをスパムと呼ぶようになったのだとか(缶詰会社がいい迷惑だが)。
「モンティ・パイソン」といえば、私が10代の頃にテレビで放映されていた風刺お笑い番組。その後、このグループの面々が映画に進出、中でもテリー・ギリアムは「未来世紀ブラジル」などでハリウッドを代表する監督の1人となり、現在も新作「ブラザーズ・グリム」が公開待機中。私の好きな監督の1人でもある。
 ただ、私はモンティ・パイソンの面白さは、はじめのうちはよくわからなかった。私の周囲では大変な人気だったのに、私はどうもイマイチだったのだ。今では大好きなアーサー王もののパロディ「モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル」も、初公開で見たときは面白さがイマイチよくわからず。それからしばらくして、「エクスカリバー」などでアーサー王伝説のことを知ってから再び見たら、すごく面白かった。
 以後はモンティ・パイソンというよりはテリー・ギリアム監督の映画になるのだけれど、ギリアムの映画はほぼずっと見続けている。初期のファンタジー映画「バンデットQ」が特に好きで、タイムトラベルをする盗賊たちと現代の少年がさまざまな世界を旅する。少年が主人公だが、子供向けではなく、ギリアムらしい残酷さやダークな面が色濃く出ていた。当時はとにかく、ファンタジーというのは日本ではごく一部のファンにしか理解されておらず、その一部のファンだけがひそかに楽しんでいたのだ。
 その後、「未来世紀ブラジル」、「バロン」、「12モンキーズ」など、日本でも注目される監督になっていったが、ファンタジー全盛になった今でもギリアムの世界はユニークで、比べるもののない独自の世界を築いている。「ブラザーズ・グリム」も、ギリアムでなければできない世界だ。


「宇宙戦争」 05/8/29

 前売り券を買ったものの、あまりに評判が悪いので、ぐずぐずと見に行かないでいたら、いつのまにか8月末になってしまった。そろそろ行かないと終わってしまうので、見てきました。
 公開前には、「未知との遭遇」や「ET」で善意の宇宙人を描いたスピルバーグが悪の宇宙人を描くとか、スピルバーグおなじみの親子や家族のテーマがあるとか、「シンドラーのリスト」や「プライベート・ライアン」の戦争映画の系列だろうとか、いろいろ言われていたが、開けてみたら、子供が出てくる以外はH・G・ウェルズの原作にかなり忠実な映画化である。
 原作では主人公は結婚しているが子供はいない。妻と離ればなれになった主人公はひたすら逃げる。地下室の出来事とか、ほとんど原作と同じである。巨大な敵と戦うのではなく、ひたすら逃げて、あとは自然の摂理に任せるというか、そういう内容。ただ、ウェルズの方には文明批評が入っているが、スピルバーグにはそういうものはない。9・11を連想させるシーンもあるけれど、スピルバーグが9・11について深刻に考えて作ったとは思えない。
 私が期待していたのは、むしろ、トム・クルーズ扮する離婚した父親が、別居中の子供たちを助けるという内容。あの「ET」が母親が離婚して母子家庭の家の子供たちの話だったので、今度はそれを離婚した父親の立場から描き直すのかと思った。
 あるいは、初期の作品、「ジョーズ」や「激突!」にあった、得体の知れない怪物との戦いの系譜かもしれないと思った。気弱な男が鮫やタンクローリーと戦うはめになり、最後に勇気を出して敵を倒す話。しかし、得体の知れない怪物もこれだけ大きくなってしまうと、もはや地震や台風や津波と同じで、あきらめの境地になってしまう。だから、鮫やタンクローリーの方がある意味、怖かった。
 父親と子供のテーマにしても、最後に父と子の絆ができるというような内容になっていない。2人の子供は親から見るとひたすらわがままで親の言うことをきかない子供で、まあ、親の立場から見るとリアルなのだろうが、うーむ。主人公も父親として成長したようには見えない。とりあえず、ヒステリーばかり起こしているダコタ・ファニングをなんとかしてくれ!
 というわけで、評判が悪いのも当然か、という映画であったが、かといって、別にひどい映画というわけではない。ヴィジュアルとかすばらしい、原作を忠実に映画化したのだからこれでいいのだ、という感じもする。ただ、スピルバーグ映画に期待するある種の満足感が得られない映画なのだ。原作を大胆に脚色した「マイノリティ・リポート」の素晴らしさを思うと、考えてしまう。

 余談だが、新作の「キング・コング」の予告編をやっていた。しかし、なんで、「キング・コング」に恐竜が出てくるんだ? ここはジュラシック・パークか? それと、キング・コングは第1作(1930年代)ではエンパイア・ステート・ビルに、第2作(1970年代)ではワールド・トレード・センターに登ったのだけど、今度はどこに登るのだろうか。またエンパイア・ステート・ビルかな??? とりあえず、それだけが気になる。


ベイカーズフィールドのゴーリー 05/8/28

 ベイカーズフィールド・コンドルズで1年、ゴーリーをつとめた人物の手記を読んでいる。
 と書くと、すわっ、福藤豊のことか???と思う人がいるかもしれないけれど、福藤のことではない。
 著者はケン・ベイカー。バッファローに生まれ育ち、高校時代はオリンピック候補選手だったが、大学時代に脳腫瘍を患ってホッケーのプロへの道をあきらめ、ジャーナリストとしてスポーツ選手や芸能人のインタビューをしたり記事を書いたりしている。
 しかし、プロへの夢やみがたく、30歳になったとき、体験記を書くという名目でマイナー・リーグのチームを探し始める。カリフォルニアに住んでいたので、カリフォルニアのチームを探したところ、自分の名前を含むベイカーズフィールド・コンドルズに目をとめ、オーナーにEメールを送ったところ、アスリートへの夢の実現に共感したオーナーはGMに紹介、しかも、コンドルズには大学時代のチームメートがいた、と、ここまではトントン拍子。しかし、オフにヘッドコーチがかわり、スターターとバックアップの2人のゴーリーを連れてきてしまったので、著者は試合に出たときだけ報酬が出る第3のゴーリーとしてチームに帯同することになる。
 まだ3分の1をすぎたばかりなのだが、最初の部分には故郷のバッファローのことがいろいろと書かれて興味深かった。少年時代、バラッソからサインをもらったこと、ルーキーのモギルニーを廊下で呼び止めたこと、コンドルズに加わる直前、バッファローで昔のコーチの指導を受けたとき、セイバーズの練習場へ行ってビロンを見たこと、などなど。カリフォルニアに戻ってからは、サンノゼ・シャークスの公開練習に出かけてロッカールームに潜入、サターやノーランやナボコフに会ったりもしているが、自分がどこの馬の骨かわからんやつだということを思い知らされる。
 話はそれるが、NHLの公式サイトに、97/98シーズンのゴーリー・トップ10のビデオがアップされている。1位はもちろん、2年連続でハート(シーズンMVP)とヴェジナ(ゴーリーMVP)を受賞したセイバーズ(当時)のハシェックだが、トップ10に選ばれている10人のゴーリーの映像を見比べていると、ドシロートの私でもハシェックがほかの9人と違うのがわかる。
 この手記の著者によると、ハシェックは当時、セイバーズのゴーリー・コーチをしていたミッチ・コーンに育てられたのである。コーンはゴーリーの導師と呼ばれ、ゴーリーの技術についての本も書いている。コーンはその後、ナッシュヴィル・プレデターズのゴーリー・コーチになった。つまり、ヴォクーンは彼に育てられたわけだ。著者はコーンとも知り合いで、コンドルズに加わったあともメールで助言を受けるなど、ある意味、恵まれている。
 シーズンが始まっても、著者は見学しているだけで出番がない。あるとき、ヘッドコーチが彼に、2人のゴーリーのどちらが優秀かについてたずねる。実に的確な批評をした彼に対し、コーチいわく、「なるほど。おれはゴーリーのことはさっぱりなんだ」。ゴーリー・コーチが必要なわけである。
 例のホッケー小説に続いて、これも翻訳したいなあ、と思うけど、どこか話に乗ってくれる出版社はないだろうか。

 おまけとして、NHL公式サイトのゴーリー・トップ10のリンクを。
700k 300k


バッファローの場合 05/8/28

 天の利は地の利にしかず、地の利は人の和にしかず。

 セイバーズのRegierGMは人の和を大事にするようだ。カルガリー・フレームズからドラフト3巡目と交換で獲得したトニ・リドマンはフィンランド人なので、当然、テッポ・ヌミネンとお知り合い。クリス・ドゥルーリーとはフレームズ時代のチームメート。そしてノロネンとはフィンランド・リーグでやはりチームメートだったらしい。
 リドマンを獲得したあと、GMはすぐにドゥルーリーとヌミネンに電話。「クリスもテッポも喜んでいた。うちはロッカールームの和が大事だからね」とGM。
 ドラフト3巡目と交換なんて、いいんですか、ダリル・サターさん、てな感じだが、フレームズはディフェンスが余っているし、リドマンは来年UFAになるかららしい。

 人の和と言えば、シャターンを放出した理由の1つは、シャターンがチームの中で浮いていて、和を乱すような存在になりつつあった、ということがあるらしい。スター選手でありながら、シャターンはついに一度もセイバーズの中心選手にはならなかった。彼を中心にチームができるということがなかったのだ。そして、03/04シーズンでは、ドゥルーリーとブリエアが完全にチームの中心になっていた。
 セイバーズのニュースを最も多く伝えているメディアはもちろん、「バッファロー・ニュース」である。シャターンが再契約のオファーを出されなかった翌日、「バッファロー・ニュース」に早速シャターンの反応が出た。そこで彼は、自分を信頼してくれなかったセイバーズにさんざん文句を言っていた。ああ、また、セイバーズを出て行く選手はチームの悪口を言うのか、と思ったが、もう一度読んでみると、悪口というよりは、セイバーズから出される悔しさ、中心選手にしてもらえなかった悔しさみたいなものを感じた。このときはまだアイルズに決まっていなかったけれど、自分を信頼してくれるチームに行きたいと語っていた。
 それにしても、「バッファロー・ニュース」はどうしてこういう、セイバーズにマイナスになるような記事を載せるのだろう。シャターンがこういう発言をするのは、記者がセイバーズの悪口を言わせたがっているようなところがあるからではないか思う。マイナスの記事を載せないメディアなら、そういう発言を引き出さないし、仮に出てきてもカットしてしまうのではないだろうか。
 実際、チームによっては、地元のメディアはヨイショ記事しか載せないところもあるらしい。なのに、バッファローのメディアでは、ああいったマイナスの記事がよくある。ヨイショ記事もあるのだが、こきおろす記事の方がインパクトが強いので、なんだか、セイバーズが地元のメディアにバッシングされてばかりいるように思ってしまう。
 セイバーズについて、わりと明るいことを言うのは、デンバーのメディアやコロラド・アバランチをカバーする記者だという。理由は、アバランチがドゥルーリーをフレームズにトレードしたことに、彼らは批判的だからだとか。ドゥルーリーへの好意がセイバーズへの好意になっているらしい。
 それにしても、セイバーズは地元のメディアの目がきびしく、その上、ファンもコアなファンばかりなので、掲示板の書き込みもかなりきびしい。こういうきびしさに耐えなければならないのだから、セイバーズの選手も関係者も大変だなあと思う。実際、バッシングされない選手はほとんどいないのだ。テッポもリドマンもがんばっておくれね。


テリー・ギリアムの新作ほか 05/8/24

 最近見た映画のいくつかをご紹介。

 テリー・ギリアム監督の新作「ブラザーズ・グリム」は、グリム兄弟が魔物退治をするファンタジー。近ごろの口当たりのよいファンタジー映画と違って、さすがギリアム、グロテスクで風刺に富んだ世界が繰り広げられている。グリム兄弟がマット・デイモンとヒース・レジャーというのがいかにもアメリカンなのが何だが、フランスが支配するドイツという設定で、グリム童話のモチーフが随所に登場。フランスの合理主義がドイツの暗い森や闇を支配しようとして、でもうまくいかないあたりがなかなか面白い。

 韓国映画「私の頭の中の消しゴム」は、結婚したばかりの妻がアルツハイマーにかかり、夫との幸せな記憶を次々と失っていく。夫と知り合う前につきあっていた男と今でもつきあっていると思い込み、夫をその男の名前で呼んだり、そういう自分に気づいて悩んだり……。クライマックスからラストにかけては、涙なしには見られません。

 タイ映画「ビューティフル・ボーイ」は日本でも話題になったオカマのキックボクサー、タイのムエタイ選手、パリンヤーの伝記映画。性同一性障害で、子供の頃から女になりたかったパリンヤーだが、戦うときは男なのが面白い。実際、強かったのだが、女性ホルモンを服用し始めてから勝てなくなり、日本で女子プロレスラーと異種各闘技戦をして、かろうじて勝つ。日本ではキワモノとして取り上げられ、タイでは国の恥と言われたらしいが、パリンヤーにとっては、女性と戦うことにさまざまな思いがあったようだ。ラスト、「男として生きることはむずかしい、女の人生もむずかしい、でも、一番むずかしいのは、どういう自分になりたいかを忘れないようにすること」という台詞が胸を打つ。また、日本で買ったマフラーを貧しい田舎の母親にプレゼントしたとき、母親が、「日本にはこんないいものがたくさんあるのね」というシーンも胸にこたえる。


続・ホッケー小説 05/8/23

 例の乱闘係が主役のホッケー小説、Valerie J. Woodの「Enforcer」を読み終わりました。
 ネタバレありなので、差し支えない人のみ、どうぞ。

 主人公の所属するロケッツというチームは都市名は書かれていないのですが、どうもアメリカ北東部のチームらしい。で、ディヴィジョン4位でもプレーオフに行けるみたいなので、北東ディヴィジョンかな、と思うけど、バッファローは対戦相手として登場するので、バッファローではない。名前が出て来ないのはボストンなので、ボストンかな、と思うけど、乱闘大好きみたいな観客の雰囲気からするとフィラデルフィアだろうか(フィラデルフィアも出て来ない)。ボストンとフィラデルフィアを足して2で割った感じか?
 他チームについては、都市名だけで愛称は出て来ない。ただ、最後になって、なぜか、サンノゼ・シャークスだけはフルネームで登場。で、主人公がオーナーから、娘とつきあわないならトレードだぞ、と言われるトレード先が実はサンノゼだったのだ(この時点では都市名だけ)。
 で、主人公は、今つきあってる彼女(スポーツバーのウェイトレス)に、サンノゼにトレードされるかもしれないけど、ついてきてくれるか、と聞く。すると、彼女はどこへでも行く、と言う。結局、ヘッドコーチが反対して、トレードはなくなるのだが、今度はオーナー令嬢がいろいろ策をめぐらして、ウェイトレスをマイアミに追い払ってしまうのだ。
 ウェイトレスに捨てられたと思った主人公はまたオーナー令嬢とつきあい始める(優柔不断なやっちゃ)。もうこの辺のメロドラマが下手くそでどうしようもないのだが、このあと、また、ホッケー中心になるので助かる。
 それにしても、この小説が書かれたのは数年前のようだが、当時はサンノゼへトレードとか、タンパへトレードとかいうといかにも都落ちという感じだったのだろうか(今はそんなことないと思うけどね)。逆に主人公のチームは北東部のエリート・チームで、乱闘とか大好きで、ヘッドコーチと選手の関係も悪いし、けっこうぐっちょんぐっちょんの世界みたいなのであった。
 さて、ロードに出た主人公は各地で乱闘係と対戦するが、ロサンゼルスで相手チームの乱闘係にコテンパンにやられ、その上、ステロイドやコカインの服用が原因で倒れてしまう。医者の忠告に従い、薬物をやめるが、かわりにスタミナが足りなくなる。ホームに戻った主人公は、今度はそこでロサンゼルスと対戦。観客は当然、例の乱闘係に主人公がリベンジすることを期待する。
 しかし、このとき、もはや乱闘をしたくなくなっていた主人公は、乱闘になりそうになったとき、さっさと退場してしまう。怒ったヘッドコーチ(GMを兼ねている)はクビを宣告。乱闘をする以外、何の取り柄もない自分はもうホッケー界を去るしかない、と思った彼は、絶望のあまり、薬物を多量に摂取して病院にかつぎ込まれる。
 この頃には主人公はオーナー令嬢からあいそをつかされ、マイアミへ遠征に行ったときに見かけたウェイトレスの彼女も別の男ができていると思ったのだが、実は、このウェイトレスの父親の友人がサンノゼ・シャークスのスカウトだったという、怒涛のご都合主義により、主人公はシャークスに拾われることになるのだ。
 つうか、マイアミに行ったとき、彼女が男を連れて見に来ていて、その男がスカウトだったのである。スカウトは主人公に乱闘係以外の素質を認め、普通の選手として雇うことにしたのだ。ただし、イメージを変えるために厳しい条件をいくつもつける。しかし、乱闘係に嫌気がさしていた主人公は、このチャンスに賭けようと決心する。

 あらすじだけだとなんだかばかばかしい話のように見えるかもしれないが、乱闘係を通してNHLの世界を描くという点は興味深かった。乱闘については批判もあるけれど、NHLのファンが乱闘が好きなこと、いろいろな理由で乱闘係が必要とされていることは事実なので、その事実を単純にいいとか悪いとかは言えない。この小説には乱闘はいけません、とか、薬物依存はいけません、というような教訓はまったくない。ただ、ひとつの現実として読者に差し出している。その上で、そういう状況で乱闘係になることを強いられた主人公の葛藤を描く、という小説なので、人間描写がもっとしっかりしていたら、小説としての価値がずっと上がったことだろう。
 あらすじには書かなかったが、主人公と父親の確執も重要な要素になっている。それは、息子がホッケーで成功することを願う父親という、ホッケーの世界にはよくあるパターンなのだが、これも描写不足。あらすじだけだとばかばかしくなるのは、そういうところがだめだからなのだ。でも、実際に読むと、ホッケーに関するシーンはやはり読みごたえがある。文章の冴えがそれ以外の部分とまるで違う。それだけに、惜しい、と思う小説なのだ。


どうでもいい話題 05/8/22

 どうでもいいっちゃどうでもいいんですが、The Hockey NewsにNHLの30チームのレギュラー・シーズン、オールタイム勝率表が出ていました。
 ここで注目なのは、セイバーズが第5位に堂々のランクインをしていることであります。しかも4位のエドモントンに0・1パーセントの僅差。あーら、こんなに勝ってたのね、っていっても、過去の栄光の話にすぎないのであります。詳しいランキングは「続きを読む」のあとに。

 金がないのでUFA選手を取れないセイバーズは、実は、金だけが原因ではない、というニュースがThe Buffalo Newsに出ました。これによると、セイバーズを出た選手がほかの選手に「あそこには行くな」と言うからだとか。

 たとえば、シカゴに行ったAucoinは、セイバーズがもう少しで獲得できたのに、アイルズの元チームメイト、ペカから悪い話を聞いたからだめになった、とか、シャターンはスロバキアの選手みんなにセイバーズに行くなと言うだろう、とか、まあ、そんなネガティヴな話である。
 確かにセイバーズを出て行く選手はチームの悪口を言うケースが多い。ただそれは、チームが貧乏で、カップを取るためにいい選手を集めることもできず、年俸のアップも渋るとか、そういう経済的な背景もあるような気がする。ただ、たとえば、コヨーテズについては、ブリエアもJRも悪く言わないどころか、なつかしがるような発言さえしてるのを見ると……。フェニックスはのんびりしているけど、セイバーズは変に過去の栄光があったり、ディヴィジョン的にも妙にエリート意識が強かったりと、ぎすぎすしたところがあるのだろうか。それと、90年代からとにかくトラブルの多いチームだったということもあるが、セイバーズ以外がみんなのほほんとした仲良し倶楽部ってわけでもないと思うんだが。JRはシカゴの悪口言ってるし。
 なお、ヌミネンはブリエアが電話で説得して来ることになったのだが、それまでに在籍したスターズやコヨーテズは100万ドルをオファーしたのに対し、セイバーズは200万ドルで契約、というのも、ファンには少しばかりショックであったようだ。
 RFA選手については、契約のオファーを出した選手はマッキーを除いて全員がサインしている。他チームのファンは、セイバーズはシャターンが抜けたのが一番の打撃、と思っているようだが、AHLの新人ヴァネクが上がってくるし、シャターンが抜けた分、若手のアイスタイムが増えるので、ファンはそれほど心配していない。むしろ心配は、ジトニクの抜けたディフェンスである。


というところで、以下はオールタイム勝率表。

All-Time Records
October 25, 2004

Here is each NHL team’s all-time regular season record, in order of winning percentage. Montreal has the most wins (2,849), Toronto the most losses (2,327).

Team Wins Losses Ties OTL Win. Pct.
MTL 2,849 1,834 837 26 .592
PHI 1,468 988 457 19 .582
BOS 2,564 1,997 791 34 .553
EDM 940 763 262 29 .544
BUF 1,257 1,022 409 18 .543 *
CGY 1,142 1,010 379 19 .526
DET 2,359 2,130 815 16 .522
COL 897 815 261 21 .521
STL 1,288 1,194 432 18 .516
TOR 2,418 2,327 783 18 .508
NYI 1,112 1,077 347 14 .507
NYR 2,231 2,261 808 20 .498
DAL 1,205 1,249 459 19 .492
WSH 1,011 1,063 303 17 .489
CHI 2,176 2,308 814 22 .488
MIN 123 132 55 18 .486
PIT 1,199 1,327 383 23 .478
LA 1,161 1,321 424 26 .473
OTT 383 436 115 20 .472
FLA 322 372 142 34 .471
PHO 785 919 266 24 .469
ANA 338 400 107 25 .464
NJ 934 1,112 328 20 .463
VAN 1,024 1,267 391 24 .455
NSH 183 228 60 21 .454
CAR 761 950 263 20 .453
SJ 382 504 121 27 .441
TB 328 487 112 27 .417
CLB 104 173 33 18 .395
ATL 120 225 45 20 .371


あるホッケー小説 05/8/20

 今、乱闘係を主人公にしたホッケー小説を読んでいる。あちらのホッケー・サイトで紹介されているのを読んで興味を持ち、アマゾンで検索したら、日本に在庫があったので、早速注文。届いてすぐ読み始めた。
 あちらのサイトでは、ホッケーの世界の現実がリアルに描かれていると書かれていたが、確かに、乱闘係と呼ばれる選手の実態が赤裸々につづられている。主人公は28歳。あちこちのチームを移籍してきたジャーニー・マンであり、いつ別の選手に取って代わられるかわからないロール・プレイヤーである。彼は最初から乱闘係だったわけでもないし、けんかが好きなわけでもない。だが、取るに足らない無名選手だった彼が、体重を増やし、乱闘係になると、それなりの人気が出てくる。彼にサインを求めてくるファンもいる。しかし、彼の家に届く手紙のほとんどは乱闘係としての彼に対する憎しみの手紙だ。乱闘係としての体格を維持するためにステロイドを使い、ほかにも薬物を多く使っている。収入も決して多くはなく、サスペンドになればその分、収入が減る。試合では、敵の選手は防具の透き間を正確に狙ってくるし、バーで飲んでいれば見知らぬ男にけんかをふっかけられる。
 読み始めてしばらくは、こうしたリアルな描写ばかりで、なかなかすごい、と唸った。読んでみようと思った理由の1つには、もしもいい小説だったら出版社に売り込んで私が翻訳を、という下心があったので、出版社を調べてみたのだけど、奥付には出版社名も住所もない。アマゾンでもう一度、出版社を確かめ、ホームページをあたってみたら、なんと、自費出版の出版社だったのである。
 つまり、普通の出版社はどこも振り向いてくれなかった小説なのだ。そして、読み進めるうちに、その理由がわかってきた。
 確かにホッケーの部分はよく書けている。しかし、しかしだ、それ以外がなんとも困ったちゃんなのである。たとえば、主人公はオーナーの娘と恋仲になり、それでチームメートから「オーナーの娘とやってるからトレードされずにすむ」とか言われ、それがいやで彼女と別れ、別の女性と恋仲になってしまう。すると、父親のオーナーが出てきて、「娘とつきあわなければ、トレードするかAHLに落とすぞ」と脅迫。おいおい……いまどき、ハーレクインだってもっとマシだぞ。
 こんな調子で、人間ドラマの部分がしょうもないのである。でもまだ半分をすぎたばかりのところなので、全部読んだ時点でまた書くことにしよう。


ニュースの見出し 05/8/16

 大物選手が破格の年俸と長期契約で次々決まっていたとき、それを伝えるTSNの見出しが面白かった。
 たとえば、デミトラがキングスに決まったときの見出しは、「King's ransom for Demitra」。「King's ransom」というのは、黒澤明監督の映画「天国と地獄」の原作、エド・マクベインの「キングの身代金」のことである。
 パルフィがペンギンズに決まったときは、「March of the Penguins」。これは日本でも公開中のフランス映画「皇帝ペンギン」の英語題名。ちなみにフランス語の原題は「La Marche de l'Empereur」。皇帝とペンギンと行進が3つの言語にばらけてるのが面白い。ちなみに「皇帝ペンギン」はパルフィがペンギンズに決まる直前に、全米1000館以上での拡大公開になったので、実にタイムリーであった。この映画、ドキュメンタリー映画としては、「ボウリング・フォー・コロンバイン」を抜いて全米歴代2位になったそうである。1位は「華氏911」。

 NHLの公式サイトのビデオ特集。今週は03/04シーズンのゴール・シーン。6位に入っているアフィノゲノフのゴールは、セイバーズの掲示板でも話題になったものだ。ライトニング戦だが、ゴーリーはハビブーリンではなくグレアム。ほかに選外でブリエア、ヘヒト、シャターンのゴールが登場。ビロンが打ち込まれてるシーンもあるなあ。

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舟を漕ぐ映画 05/8/15

 最近、暑くて寝不足のせいか、試写を見に行って眠くなってしまうことが多い。タダで見てるから緊張感がないんだろう、と言われたらそのとおりなのかもしれないが。
 一番舟漕ぎやすい季節はやはり花粉症の頃で、鼻炎の薬を飲んで出かけると、ちょうど見ている最中に睡魔が襲う。しかも、そういう映画はたいてい、アート系のいい映画だ。これはいい映画だ、しっかり目を開いて見なければ、と思うのに、眠くなる。これがくだらない娯楽映画だと、絶対に眠くならないから不思議だ。なんだ、この映画は、と腹が立つので、目がギンギンに冴えてくる。
 もっとも、本当に寝てしまったことは長い映画鑑賞歴で一度もない。まぶたがふっと下がってきて、おっと、いけない、と目を開ける。その繰り返しである。だから、一応、全部見ているのだが、いい映画なだけに、大切なところを見落としているのではないか、もっと感動できたのではないか、と後悔しきり。最近、そうなった映画は……いや、題名をあげるのはやめよう。
 寝てしまう人が多い名作で有名なのは、スタンリー・キューブリックの「2001年宇宙の旅」だろう。冒頭の猿のシーンで寝てしまい、目が覚めたらラストの赤ん坊のシーンで、「なんだ、「猿の惑星」と同じ話か」と思った人がいた、というジョークがあった。私はこの映画を、テアトル東京でのリバイバルで見たが、もちろん、眠くはならなかった。骨を放り投げるとそれが宇宙船になるシーンが美しかった。まだ花粉症になる前だったし、あの頃は映画を見ていて眠くなるなんてことはまったくなかったと思う。映画を見ることにはいつも緊張感があった。
 前に紹介した「チャーリーとチョコレート工場」に、「2001年宇宙の旅」のパロディが出てくる。猿の前に現れるモノリスは……。あのリヒャルト・シュトラウスの名曲「ツァラトゥストラはかく語りき」も登場。


困ったハリウッド映画 05/8/13

 基本的に、これから公開される映画についてはマイナスの宣伝になるような批判はしない主義なのだが、最近見た映画に、非常にイヤな感じのハリウッド映画があった。
 1つは、コンピューターの頭脳を持った無人戦闘機が落雷を受けておかしくなり、勝手に攻撃を始めてしまうというもの。予告編を見たときは、無人戦闘機が世界の都市を次々と襲撃、それを阻止するために主人公のパイロットたちが活躍する映画だと思ったのに、フタを開けてみたら、全然違う。無人戦闘機が他国の上空で勝手し放題、それを肯定するような描き方になっていた。しかも、その他国というのは、北朝鮮や旧ソ連のイスラム国家。はっきり名指しで出てくる。
 もう1本は、アクション・スターとして有名なある俳優が5人の子供の面倒を見るはめになるというコメディ。ここでも、特殊部隊の隊員である主人公の敵として現れるのは北朝鮮だったりアラブの国だったり。コリアン・アメリカンなど、マイノリティの描写も感じが悪い。
 1980年代のハリウッド映画は非常に安易にアラブ人を悪役にしていた。そのときはアラブ系アメリカ人から抗議が沸き起こり、映画会社は謝罪。以後、安易にアラブ人を悪役にする映画はなくなった。ところが最近、急に、特定の国を悪役にして平然としているハリウッド映画が増えている。そこで悪役にされているのは、北朝鮮、中国、イラクなどのアラブ諸国、旧ソ連のイスラム国など。トニー・スコット監督の映画はこのところ、主人公が中国でやり放題(「スパイゲーム」)、メキシコでやり放題(「マイ・ボディガード」)と、実に感じが悪い。
 確かに、かつてのアメリカ映画も日本を安易に悪役にしたりしていたが、日本が有力なマーケットになってからはそれはできなくなった。北朝鮮や中国やアラブ諸国を悪役にして平気なのは、有力なマーケットではないからだろうが、それでも、少し前までのハリウッド映画にはもっと気配りがあったと思う。それが今は、やっつけてもいい国を設定して、あとはやり放題。こういう鈍感さがハリウッドに蔓延しているのがひどく気になる。


Summer of Stanley 05/8/9

 NHL公式サイトに、昨年夏のスタンレーカップの旅の映像がアップされている。
 タンパベイ・ライトニングのマルタン・サンルイ、デイヴ・アンドレイチャク、クレイグ・ラムゼイ、ブラッド・リチャーズ、ジェイ・フィースターの5人が自宅やゆかりの場所にカップを持っていく様子をつづったドキュメンタリー。ライトニングのプレーオフの試合や優勝シーン、ロッカールームでのシャンパン・ファイトなどの映像もある。
 サンルイは母校のヴァーモント大学と自宅へ、アンドレイチャクは特別に2日与えられて故郷のハミルトンと自宅のあるバッファローへ、ラムゼイはバッファローの近くのフォート・エリーのゴルフ場へ、リチャーズは故郷の赤毛のアンの島へ、そしてGMのフィースターはペンシルヴェニア州の町へ。アンドレイチャクがバッファロー・ウィングをカップに入れたソースにつけて食べるシーンや、ラムゼイがセイバーズの選手として出場した75年のカップ・ファイナルの映像も見られる。全部で45分くらいある長いものだ。家族や友人のインタビューなどもあって、なかなか見応えのあるビデオだった。
 しかし、ハビブーリンはもうライトニングではなく、サンルイはきっと再契約でもめるだろうと思うと……。ライトニングのすばらしい季節ももう過去のものなのだ。

 ということで、リンク。
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あーあ。 05/8/6

 しばらくNHLから離れようかなあと思っている。ルール変更や何やらでゲームが面白くなるかは関心があるけど、今、経済状態が悪いので、スカパーやケーブルテレビにお金を払う余裕がないかもしらん。ネットラジオではそういうことはわからないし。それに、セイバーズが強いチームや強くなったチームにボコボコにやられるのは見たくないし。
 それにしても、サラリーキャップが導入されればセイバーズのようなチームに有利に働くと言われ、昨年春にはもう少しでプレーオフに行けたので、今度こそ、と思わせておいて、開けてみたら飛車角落ちのAHLに毛が生えたようなチームになってるって、なによ、これ!(言い過ぎか?)

 サラリーキャップが導入されたんだから、もう言い訳はできない。どん底のチームが大物を1人か2人取るだけで、突然、プレーオフ・チームに見える現実を見よ! リーフスやアバランチは大変だけど、それはしかたがない。今は辛抱してまた盛り返すさ。大型補強をしない弱小チームもあるけど、チーム最高の選手を2人も失ったりはしていない。タンパは大変そうだけど、優勝した直後だからね。
 最高の選手を2人も失っているのに、UFA選手の最低入札価格を見ただけで競争に参加せずって、誰も見向きもしないひどいチームをここまで支えてきたファンが気の毒だ。ファンが気の毒てのが一番大きい。私はセイバーズのファンというよりは、ファンのサポーターだったから。
 あとは、フィリーみたいにキャップの上限を超えそうなチームが、頼むから誰か引き取ってくれえ!と言ってきたときに、いい選手をもらうくらいしかない。でも、そういうときでも役に立たない選手を引き取ってしまうのがきっとセイバーズ(笑うっきゃないね)。

 セイバーズのマネージメントを見てると頭に来るから、ちょっとほかの話題を。
 あんまり動きのない北東ディヴィジョン。リーフスとハブスとボストンがちょっと動いたくらいで、センズは音無しの構え。リーフスはどうやってキャップの上限以内に収めるかが大変なようだし、センズも実は上限にかなり近いところにいきそうだという。そこで注目なのがハシェックの年俸。実は基本給の150万ドルしかキャップに含まれていないのだ。なぜかというと、以前CBAの契約なので、ボーナスは含まれないのだという。ハシェック以外に150万ドルのゴーリーなんて誰がいる? ビロンだって200万ドル以上取るのに。そう思うと、このまま行くのが最良の選択だろう。今季はセイバーズは完全にプレーオフ圏外、リーフスもあんな状態だし、デビルズとタンパは戦力低下しそうだし、むしろ赤丸急上昇はフロリダとアトランタとペンギンズかもだ。東の勢力図もかなり変わりそう?


フリー・エージェント狂想曲 05/8/5

 この数日間、セイバーズのファンはパニックになっていた。公式掲示板にはチームに対する非難が殺到し、10人ほどの有志が監視して不穏当な書き込みやスレッドを削除していたほど。
 理由は言うまでもない。シャターンとジトニクの2人をニューヨーク・アイランダーズに取られてしまったからである!
 シャターンとジトニク、そして42歳のUFAジェームズ・パトリックは99年のカップ・ファイナルの主力の内、セイバーズに残った最後の3人だった。これでパトリックがサインされなければ、あの時代の主力は完全に消えたことになる。

 セイバーズはオーナーの意向で、年俸総額を2900万ドル以下に押さえたがっている。そのため、UFAのジトニクをキープするためにシャターンを放出することにした。そこで、ドラフトの最中にもシャターンのトレード先を探していたのだが、どこもシャターンの年俸380万ドルは高すぎるとして断った。結局、7月31日にシャターンへの契約更新のオファーは出されず、8月1日に晴れてUFAになったのである。
 このとき、多くの人はシャターンの年俸380万ドルは不相応に高く、UFAではこれより低い年俸のオファーを受けることになるだろうと思った。シャターン自身も、どこもトレードに応じてくれなかったということで、かなりがっかりしていたようだ。
 セイバーズはディフェンスの要、ジトニクをキープしたいと、昨年オフに400万ドル4年間の契約を申し出ていたが、ジトニクは他のチームからのオファーも見てみたいといって、契約は保留にしていた。そしてロックアウトに入り、今年の7月に労使交渉が合意。選手は一律年俸24パーセント・カットとなり、サラリーキャップが適用された。
 セイバーズでは、昨年のオファーの24パーセント引きにあたる約300万ドル4年間の契約を申し出た。しかし、ジトニクは350万ドル4年間でアイランダーズと契約してしまった。
 その頃、シャターンのもとには多くのチームからオファーが殺到し、しかも金額は400万ドル以上というニュースが伝わってきた。そして、翌3日、彼は平均420万ドルの3年間の契約で、同じくアイランダーズへ行ったのだった。
 セイバーズのファンはパニックになった。シャターンについては、彼らもいたしかたないと思っていたのだ。ジトニクか、それに代わる一流ディフェンスを取るためにはお金が必要だし、シャターンは来年にはUFAになるから、いずれはお別れしなければならない選手だった。
 それが、ジトニクも取れず、シャターンがジトニクと一緒にアイランダーズに行き、そして、なんと、今度はシャターンに代わってペカがエドモントン・オイラーズにトレードされた。
 ペカはシャターンやジトニクと一緒にセイバーズでプレーしたセイバーズの元キャプテンである。2000/01シーズンに年俸をめぐって1年間ホールドアウトし、その結果、2001年オフにアイランダーズにトレードされた。以後はアイルズでキャプテンをつとめていた。
 アイルズはヤシンという超高額年俸選手がいるので、高い選手を何人もは置けない。ペカの年俸はシャターンの年俸とほぼ同じ。だから、ペカをトレードして、そこにシャターンを入れたというわけである。また、アイルズはトップ・ディフェンスマン、オーコワンをUFAで失っていたので、ジトニク獲得は相当に必死だったらしい。ジトニクはセイバーズに残るだろうという楽観論があったので、フロントは油断していたのだろうか。
 UFAにはジトニクに匹敵するディフェンスはあまりいない。ニーダーマイヤーやゴンチャーのような高い選手はとうていセイバーズの手に届かない。しかし、アイルズが契約した350万ドルはセイバーズに払えない額ではなかった。キャップスペースも十分にある。だが、収入がリーグ最低なので、年俸は節約しなければならない。いわば、セルフ・キャップのようなものを設けてしまっているのである。
 セイバーズのフロントは、ジトニク獲得のために金額を競り合うつもりはなかったという。しかし、昨年、セイバーズが400万ドル4年間というオファーを出している以上、今年は300万ドル4年間というオファーを出すだろうということは容易に想像できる。他のチームがジトニク獲得に乗り出す場合、これより高いオファーを出すに決まっているのだ。
 もちろん、セイバーズが350万ドル出せばジトニクが来るとは限らない。アイルズや他のチームは今度は400万ドル出してくるかもしれない。こういう競り合いは金を出せるチームには勝てない。サラリーキャップがない時代は、それは金持ちチーム、金を出せるチームだったが、今は金が出せてキャップスペースがあるチームだ。金があってもキャップスペースがなければ出せない。キャップスペースがあっても金を出す気がなければだめである。
 サラリーキャップが導入されれば、金持ちチームは選手を一部失うことになるが、貧乏チームはこれまでのような失う一方ということはなくなり、失うけれど得るものもあるという時代になると思われていた。そして、実際に、貧乏チームがドンと金を積んで、大物選手を取ったりもしている。
 しかし、セイバーズは相変わらず失う一方なのだ。一度にシャターンとジトニクを失ってしまったファンは、2001年オフに一度にハシェックとペカを失ったのと同じくらいのショックを受けた。もはやUFA選手は取れない、今いる選手で来季を戦うしかない、という絶望的な悲観論が渦巻いた。
 もちろん、若い選手でいいチームを作り上げているのだから大物を入れる必要はない、トレードで地味なディフェンスを2、3人獲得すれば大丈夫、といった楽観論もあった。大物に不相応な大金を払い、長期契約をしたチームはいずれ、キャップスペースをふさがれて困ることになる、といった意見もあった。他のチームのファンからは、セイバーズはまだいい方だ、と、慰められたりもした。
 そして、8月4日、ウィニペグ・ジェッツとフェニックス・コヨーテズで活躍した37歳のベテラン、テッポ・ヌーミネンがセイバーズに加わるというニュースが流れた。ジトニクのかわりにはならないが、若手の指導など、ベテランとして力になってくれることが期待されている。
 UFAも大物選手が次々と片付き、今度は大物を取って年俸総額が高くなりすぎたチームがトレードを始めている。ペカのオイラーズ行きもその1つ。シャターンに関していえば、どこもトレードに応じてくれなくてガックリだっただろうが、400万ドルを超えるオファーがいくつも来て自信を取り戻しただろう。シャターンにとっては、むしろ、UFAになってよかったのだ。ジトニクは引っ越しをしたくないのでできればセイバーズに、というようなことを言っていたのだが(それで信じてしまったのね)、アイルズなら同じニューヨーク州なので引っ越ししなくてすむ。シャターンも引っ越ししなくてすむ。ペカは今でもバッファローに住んでいるが、彼はエドモントンに移るのだろうか。
 セイバーズのディフェンス探しはまだ終わったわけではない。でも、あのパニックと悲観論の4日間がすぎて、ファンも少しは落ち着けるかもしれない。


「チャーリーとチョコレート工場」 05/8/2

 ティム・バートン監督とジョニー・デップのコンビによる児童文学の映画化。原作は読んでいないが、けっこうキツイ内容の話だ。
 世界中で大人気のチョコレートを製造している工場が、5人の子供たちを工場に招待するゴールドチケットを封入したチョコを売り出す。この工場は以前、レシピを盗まれたことから、外部の人間を完全に排除しているので、みんな、中を見てみたい。ゴールドチケットを手に入れたのは、毎日チョコを食べている意地汚い少年、何十万個もチョコを買ってチケットを当てた大金持ちのわがまま娘、勝負に勝つことしか頭にない柔道チャンピオンの女の子、データを分析してたった1個でチケットを当てたコンピューター・オタクの少年、そして、チョコを食べられるのは年に一度という貧しい家の少年チャーリー。
 はっきり言って、チャーリー以外はみんな、イヤな子供である。自分のことしか頭になく、心がゆがんでいる。何というか、勝ち組の傲慢さに満ち満ちているのだ。それに対し、チャーリーと家族は負け組。でも、チャーリーと家族はとても仲がよく、お金では買えない幸せを持っている。
 さて、チャーリーと4人の少年少女は付き添いの保護者と一緒に工場へ行く。彼らの前に現れたのは、なんと、マイケル・ジャクソンーーもとい、まんまマイケル・ジャクソンのジョニー・デップなのだ! で、工場の中はまさにネバーランドーー「ネバーランド」って、デップが「ピーターパン」の作者を演じた映画じゃないの!
 「ネバーランド」自体、デップだからいいけど、子供と妙に仲良くなって、マイケル・ジャクソンぽい、という意見があったのだ。
 このマイケル・ジャクソンぽいデップ(なかなかの名演技!)が何のために子供たちを招待したのか、子供たちはそこで何を見るのか、それは言わないでおきましょう。鼻つまみな勝ち組連中にムカついているなら、ぜひ、この映画をどうぞ。9月公開予定。